オルペウスは竪琴の名手であり、また巧みな歌い手でもあります。その歌声には、神々も妖精も野獣も、魂を持たない自然界の樹木や岩石までもが感動してしまうほどのものでした。
二人はとても深く愛し合い結婚をしました。
でも、幸せは長くは続きませんでした。エウリュディケが毒蛇に足をかまれて死んでしまったのです。
オルペウスは悲しくて仕方がありません。あきらめきれないオルペウスは、恐怖心を抑えて黄泉の国までいき、冥界の王ハデスにエウリュディケを返してもらうようにお願いするために旅立ちました。
ペルポソネ半島が地中海に足を突き出すその最南端にタイナロン岬があります。このあたりには洞穴が多く、そこから冥界への道が通じていると考えられています。
オルペウスは、どんどんどんどん、進んでいきます。どうして生身のオルペウスが地獄を進むことができたか。それは、彼の奏でる竪琴と歌声が冥府の 番人たちを感動させたからでした。あの地獄の番犬ケルベロスでさえ、美しい音音に凶暴なうなり声を発するのを忘れてしまいました。
オルペウスはハデスに「どうか私の妻を帰してください」と頼みます。ハデスもペルセポネも彼の歌に心を動かされていたので、了承します。ただし「太陽の光を仰ぐそのときまで、決して汝の妻のほうへ振り返ってはならないぞ。これが掟じゃ」と告げました。
オルペウスは喜び、エウリュディケの手を引いて道を引き返しました。でも、道のりは長い。エウリュディケは何も話してくれない。ほんとうに、この 日とはエウリュディケなのだろうか。手も冷たいやせた感触だ。ハデスは自分をだましたので花だろうか。などなど、人間らしいことを考えます。エウリュディ ケを呼んでみました。返事はありません。
も~~~お、我慢できません!!! あ~、~、~、だ~め~、~、見ちゃあ、だ~~め~~。
見てしまいました。
妻の顔は、この上なく悲しげな表情でした。姿はたちまち薄くなり、ふらふらと地の底に落ちていきます。「さよならオルペウス・・・・・・・・・・・・・・・・」
オルペウスは後悔の念にからねながら、もう一度、冥界へと歩を進めますが、今度は、誰も彼の求めには応じてくれません。、オルペウスは川のほとり に腰を落として、七日七晩泣き続けました。その後仕方がなく、トラキア地方の深い山の奥に行って、姿を隠しました。そこで、亡き妻のために、竪琴を奏で、 歌を歌いながら、過ごしたのでした。
たまらないのは、トラキア地方の女たち。こんな素敵な歌を毎日聞かされては、身ももだえてしまいます。でも、どんなに誘惑しても、オルペウスは のってきません。バカにされたと勘違いした女たちは、オルペウスに石を投げました。その石がオルペウスにあたって死んでしまったのです。女たちはオルペウ スの死骸は八つ裂きにしました。いつの時代も女は恐ろしいものです。
オルペウスの魂は、地底でエウリュディケとであり、ふたりは念願の愛の巣をそこでつくりました。
まあ、めでたしかな。
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