どの本よりわかりやすい源氏物語　超初級篇

　その夜、寝床に入ったときに、枕上に美しい女がいました。なにを言っているかを聞いてみると、恨み言を言いながら隣に寝ている夕顔を引き起こそうとします。

　光源氏は、重苦しい気分を振り払うように太刀を抜き、近侍を呼びました。風が強く吹き出し、灯火（ともしび）の消えた人気のない屋敷の中は、言葉にできないぐらい気味が悪い。

　やっと灯りが来たとたん、またも、さきほどの怪しい女の影がふと見えてまた消えました。光源氏は、隣の夕顔を引き起こそうとしますが、すっかり冷え切って、息も耐えているように見えました。

　近侍に夕顔を頼んで、自らは二条の院（光源氏の住まい）に戻ったけれど、自分も頭痛と熱に悩まされ、このまま死ぬのではないかとさえ思いました。

　果たして夕顔はついによみがえらず、死体を確かめに行った光源氏はそのまま嘆き繰るしみ、長い間、病床につきます。　　なんと悲しい出来事でしょうか。やっと心許せる夕顔に出会えたのに。　つづく