金閣寺(歴史的假名遣ひと正しい漢字)

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 さすが三島由紀夫です。描寫が見事です。
 信じがたいことが起こつたのはそのあとである。女は姿勢を正したまま、俄かに襟元をくつろげた。私の耳には硬い帶裏から引き抜かれる絹の音がほとんどきこえた。白いむねがあらはれた。私は息を呑んだ。女は白い豐な乳房の片方を、あらはに自分の手で引き出した。

 士官は深い暗いいろの茶碗を捧げ持つて、女の前へ膝行した。女は乳房を兩手で揉むやうにした。

 私はそれを見たとは云はないが、暗い茶碗の内側に泡立つてゐる鶯いろの茶の中へ、白いあたたかい乳がほとばしり、滴り殘して納まるさま、靜寂な茶のおもてがこの白い乳に濁つて泡立つさまを、眼前に見るやうにありありと感じたのである。

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このページは、宝徳 健が2014年11月27日 06:28に書いたブログ記事です。

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