講演録

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   JA愛知経済連の会報誌「かけはし」の2月号に 昨年10月に行いました講演会の内容が掲載されましたので紹介しておきます。タイトルは「経営資源最大化へ の挑戦」~SSの黒字化は可能か?~です。
  

皆さんこんにちは。宝徳と申します。平成13年3月まで出光興産に勤めておりまし て、その後独立して他業種をいろいろと経験しました。その中で、「SSというのは圧倒的にもうかる業種だな」ということを、他業種を経験すればするほど実 感をしています。しかし、この業界の人たちがSSという事業を小さく捉えていることを非常に残念に思ってもいます。
JAのSSを全国何か所か回らせていただいたことがあり、商系を凌駕する収益のSSに出会ったこともあります。しかし、中にはSSという事業がお荷物だと いう認識をされている方が何人かいらっしゃいました。その発想ではSSは黒字にならないと思います。今は確かに苦しいのかもしれませんが、この事業は面白 いのだということを、まず経営者が思わなければ黒字化は無理です。ですから、いつも話をさせていただくときには、「SSという事業を愛していますか?」と 問いかけます。「スタッフを愛していますか?」「お客様を愛していますか?」ということを。出光興産時代に、部下には「スタッフが楽しそうに働いて、お客 様が楽しそうに買い物に来てくださるSSに赤字はない。そういうSSを作れ」と、いつも言っておりました。
講演のタイトルに「SSの黒字化は可能か?」と、クエスチョンマークをつけていますが、これはビックリマークをつけたいほど可能です。セルフSS(以下、 セルフ)の登場は、商売の形態に広がりが出るのでうれしいと思っています。しかし、フルサービスSS(以下、フル)はセルフの出現を受け、「今まで」から 変わらなければ黒字化にはなりません。売る物ややることは変えなくても結構です。変える必要があるのは、「考え方」と「やり方」です。
SSの黒字化は十分に可能です。ただ、黒字化するだけでなく、環境がどのように変化しても対応できる投資が可能であったり、業態を転換できるほどの利益が 上がる事業にしていく必要があります。単なる黒字化ではなく、利益を十分確保できる事業にするのだという強い意志を、事業に携わる人たちが持たなければ、 流れに押しつぶされてしまうと思っています。「赤字を黒字にしたい」という発想ではなく、SSを核事業として位置付けられるかどうかが重要だと思います。
SSが儲かる土壌は、ドライブウェイに詰まっています。そのことに、事業に携る方たちが気づくかどうかです。奇をてらって新しいことはしないでください。 売るものもやることも変えません。それぞれのスタイルで考え方とやり方を変えていくだけです。

「やろう」と決めたことは80%の実施率を

私はコンサルタントを務めるSSには、「新しいことをしなくても結構です。今持っているものをすべて掘り返していけば、油外(燃料油以外)収益に 限っていえば、倍になります。断言します」と言っています。
SSには多くの作業収益商品があります。ものすごくたくさんあるのですが、その商品をお客様は知らないのです。作業収益商品は「売れない」のではなく、お 客様が「買えない」状態にあるのです。それを、「何かが足りないから売れないのだ。新しい商品を入れよう」と勘違いして、新商品を投入します。すると、ま たそれが埋没していくというケースが非常に多いのです。
私が出光興産に入社した頃は、SSを「給油所」と呼んでいました。それが、「ガソリンスタンド」「サービスステーション」と呼ばれるようになってきまし た。しかし、売れないSSがやっていることは、まだ「給油所」なのです。多くの商品があるのに、それをお知らせしないからお客様は買えないのです。
お客様の車を点検して正常だと、ガックリしているスタッフ、商系でもよくいますよね。「お客様の車が正常なら喜べよ」と言いたいのですが、商品が売れない からガックリするわけです。この考え方を少し変えて、お客様の車をケアしてあげる気持ちを、今よりも少しだけ持つと良いですね。キャンペーンなどで普段実 施しないオープンボンネットを一生懸命やって異常がなくてガックリするよりも、パンクを見つけてあげるほうがお客様は喜びます。ストップランプが切れてい るのを見つけてあげたら、喜んでくれます。そういった小さなケアを、良い接客の中でどれだけしていけるかということが、大きな鍵です。
また、私は、SSで一番難しい仕事は窓ふきだといつも言っていますが、窓ふきの下手なSSがとても多いです。窓ふきでそのSSの事業品質がすぐに分かりま す。私は月に30か所ほどSSを訪れるのですが、フルでも窓ふきが下手なSSばかりです。
収益を上げているSSが何をしているかというと、変わった行動など一切していません。「やろう」と決めたことを、80%以上の実施率で行っているだけで す。普通のSSでは、やろうと決めたことの実施率は20%から30%程度です。収益を上げているSSは、やろうと決めたことを80%の実施率でスタッフに やらせるマネジメントがあるのです。
「売るものややることを変えなくても結構です」というのは、やろうと決めたことを80%の実施率でやればいいからです。これはセルフであろうと、フルであ ろうと同じです。ただ、JAさんは商圏内に拠点を多くお持ちなので、まずそれぞれの位置付けを明確にする必要があります。それから現在の商品がどういった 状態になっているのかを分析し、それぞれを最大化するためにはどうすればいいかを考えてください。

検証を必ず実施する

私はあまり「オイル交換をやれ」、「オイルを何リットル売れ」、「洗車をいくら売れ」などとは言いません。そういった数値は現場で決めることです。 私が一番重視することは、検証です。ありふれたサイクルですが、PDCサイクルの「C」、チェックの部分、ここを一番重視します。例えば「このSSはガソ リン専売型のセルフだから、こういった行動計画を作ろう」と進めていき、目標達成のためのマネジメントを学習していただき、検証する。一番大事なのは、こ の「検証」です。
商系のSSに行くと、よく会議で「オイルを700リットル売れといったのに、500リットルしか売れていない。なぜできなかったんだ!」という話をしてい ます。しかし、できなかったのだから仕方がないです。現場の人間は、じっと下を向いて「早くこの会議終わらんかいな」と思っているだけです。会議が終われ ば、またいつもの現場に戻っていきます。
検証というのは、「どうすれば良かったか」を考えることです。この考え方にシフトするのに、ものすごく時間がかかります。10人ほどのマネージャーに、こ の検証について説明した後で、会議をします。私が「では、今年1年間を検証してみましょう。Aマネージャーからどうぞ」と言うと、「今年は、何が多いかと いうと......」と反省から入ります。そこで「反省ではなく、検証だと言ったでしょう」と言うと、「あ、そうでしたね。検証でしたね。あそこはこうすれば良 かったですね」と話し始めます。そして「ではBマネージャー」と次を促します。Bマネージャーは「今年は雨が多くて...」と、また反省です。同じことばかり です。それで「だから反省ではなく、検証です」と言った具合で進めていきます。反省もしていいのですが、反省した後に「では次回はどうするのか」という検 証をしなければなりません。大変時間がかかります。しかし、このサイクルさえ現場で作ることができれば、あとは勝手に動き始めます。
ところが、上に立つ人たちがマネジメントとして「こう言ったはずだろう」と言ってしまうのです。「はず管理」といいます。「言ったはずだろう」、「教えた はずだろう」のはず管理。恥ずかしい管理です。はず管理をしているうちは反省が頭から抜け出なくて、現場は何をするかといえば、言い訳をします。そりゃあ マネージャーのほうが現場を知っていますから、言い訳は天才的に出てきます。
しかし、検証であれば言い訳ができないものです。「では、どうすれば良かったの?」と聞けば、四苦八苦して改善策を作ります。それがサイクルとして回って いけば、あとは放っておいても売り上げが上がります。「来月は何をやるの?」と聞くと、「これをやる」と言います。「どうやってやるの?」と聞けば、「こ の前のキャンペーンでこういうところに気をつけたら良かった、とスタッフで話し合いました。それを生かします。資料を作ってあります」――。もう黙ってい ても大丈夫です。この考え方にするまでには、とても時間がかかります。しかし、ノウハウや指示命令を押し付けていると、現場はずっとそのままです。いつま でもマネジメントに手間暇がかかってしまい、目標を達成できません。はず管理は、達成できない方法を押し付けているのに、達成できないことを現場に怒って いるのです。
私がコンサルティングを請け負うと、半分以上はこの訓練をしています。ノウハウを教えることは一次的には業績は上がるのですが、その後が続きません。現場 もどうすればいいのかということは、分かっているのです。動きやすくなるための思考力をつけてあげれば、勝手に収益を上げていきます。

経営者がこだわる

まず、「お客様にはこう対応しよう」「この商品はこういった方法で売ろう」「うちのSSは、こういった方向に進んでいくのだ」ということを、経営者 が整理してあげてください。そして、「このSSはこうするのだ」ということを、常に言い続けてください。「ここはフルでやっていくのだから、いい笑顔を 作ってくれよ。やると決めたことをちきんとやって、報告をきちんとしてくれよ」ということにこだわってください。そうでなければ、現場は動いてこないもの です。理由付けしてあげるだけです。あとは検証を必ず実施してください。いつも見ていてあげて欲しいと思います。
これはフルでもセルフでも同じですが、SSにはやってもやらなくてもいい作業が多すぎます。SSは、月間で揮発油を100キロ売っていれば、3,000 台、4,000台は来店するでしょう。客単価を100円上げたらどうなりますか。月間で30万円も違ってきます。200円上げると60万円違います。私は 理美容業もしていますが、理容室や美容室の多いところで月間来店は300人、400人です。100円上げても3万円か4万円しか変わらないのです。
SS事業は、全員で取り組めば収益は劇的に上がります。ですから、まず上に立つ人がもう少し見方を変えて「いくら足りないからいくら売れ」ではなく、「客 単価を100円上げるには、10台に1台、1,000円の洗車をするだけでいい」などとゆっくり話してあげてほしいと思います。その小さなマネジメントが できるかどうかなのです。SSは絶対に黒字化できます。できないのは経営者が悪いのだと、私は思っています。
とにかく、こだわってください。難しいことをやらないでください。簡単なこと、できることからやってください。簡単なことを一個一個確実にできるようして いけば、収益はものすごく上がってきます。
お客様とスタッフと事業を、ぜひ愛してください。そして、フルでもセルフでも店舗が常に進化するようにしてください。この看板の角度はこれで本当に見やす いのだろうかと一生懸命考えて5度曲げてみるとか、ごみ箱の位置は、本当にここならお客様がごみを捨てやすいのだろうかと考えて位置を動かしてみるとか、 少しずついろいろな変化を起こしていってください。
この事業は本当に素晴らしく、私たちがほかの業界に「SSって素晴らしいでしょう」と言えるようになりたいと思って、日々仕事をしています。非常に生意気 な表現もあったと思いますが、この事業を愛する者の一人として、ご容赦いただき、私のお話とさせていただきたいと思います。ご清聴ありがとうございまし た。

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このページは、宝徳 健が2006年2月 3日 16:01に書いたブログ記事です。

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