蒋介石日記

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  これも難しい方は読まないでください。貴重な歴史資料なので、自分がとっておきたいだけです。

【平成18年4月18日 産経新聞記事 済南事件】
 北伐による中国統一をみた1928(昭和3年)年末、蒋介石がこの1年で最も屈辱的と感じたのは、前回紹介したとおり、北京に進撃する北伐軍と山東出兵した日本陸軍が済南(山東省)で衝突した「済南事件」(同年5月3日)だった。

 どこまで蒋介石が怒りに身を震わせたのかは、日記によく表れている。事件直後の5 月14日には「毎日、日本を滅亡させる方法を一か条書くことにする」と記し、翌日から今回公開された1931年(昭和6年)分まで、ほぼ毎日欠かさず日記 の冒頭に「雪恥」(はじをそそぐ)の二文字を書き続けたほどだ。
 ここで大方の日本人は「はて」と首をかしげるだろう。済南事件については、北伐軍兵士らによる在留邦人婦女子の惨殺がまず頭に浮かぶ。「屈辱」の主客が逆では、というのが普通の理解だ。

 これと対照的に、日本側で対中謀略の典型とされる張作霖爆殺事件(1928年6月4日)では、蒋介石の記述は「爆弾で負傷し命を落とした」と冷淡そのものだ。

 爆殺人前日の日記を見ると「張逆(逆賊の意味)作霖が駆逐され、山海関(中国東北部と中心部の境)を出て行ったが、戦いは終わらず楽観できない。外交、政治とも勝算はない」(6月3日)と、深刻な書きぶりだ。
 当時蒋介石が日本の関与に感づいていたかはさておき、爆殺を"厄介払い"と受け止めたのは間違いない。記述は「張作霖爆殺人」とう体験を蒋介石と張学良が共有できなかった証左であり、西安事件の導火線を読み取ることが出来る。

 済南事件の記述に戻ろう。蒋介石は事件を引き起こす北伐軍の第一軍を直接指揮し、事件前日にいったん済南市外の様子を確認している。
 《済南城に6時(午前)入る。沿道では日本軍が鉄条網をめぐらし、おびただしく警戒。わが軍、人民の通行にも横暴であり、亡国のありさまだ。(中略)わが兵への殺傷や捕縛も聞く。種々の挑発や侮辱行為は耐え難い。》(1928年5月2日)

 事件前日から、蒋介石の判断は日本軍による「挑発」の1点で固まっていたことが分かる。事件当日の記述はこうだ。
《遠方で機関銃の掃射音。軍の試射かと調査を命じた矢先、日本軍とわが部隊が市街で衝突して銃撃戦。(中略)午後五時を期して済南からの撤退を各部隊に命じたが、夜も続く日本軍の砲撃でわが通信施設も大破。種々の暴挙ぶりは人の所業ではない。》(5月3日)

 いわゆる「歴史認識」は事実の起きた瞬間から当事者間で食い違いかねない。日本側で事件直後から伝えられていた在留邦人への暴行や惨殺に関して、 蒋介石は日記で一言も触れていない。報告を受けていなかった可能性は否定できないが、蒋介石を頂点とする権威支配が固まる中で、この日記に示された認識が 「完全な史実」として中国国民の間に定着したことは記憶すべきだろう。

 蒋介石が愛用した商務印書館(上海)発売の「学校日記」は、民国19(1930)年版の通年行事欄で「五月三日 済南惨案国恥記念日」をこう説明している。

《(日本は)居留民保護を口実に山東に出兵し、五月三日に済南でわが革命軍民千余人を惨殺しました。(中略)9日から10日にも済南に大砲を打ち込み、軍民数千人を殺したのです。》

 記念日の活動として、この説明では全国で旗を揚げ、「日本帝国主義の野心を暴露する」宣伝活動が奨励されていた。
 蒋介石が1928年5月14日に記した「日本を滅亡される方法」の第一か条は「教育を厳正にし、逸材を用いる」だった。こうした初等教育を受けた世代は、すでに80歳前後。現代中国で「愛国主義教育」を進めた中国共産党の江沢民前総書記もこの時代の子供だった。

※ 済南事件
1928年8月5日 中国山東省の済南で、内戦から居留法人を保護する目的で第2次山東出兵した日本軍が、蒋介石の北伐ぐんと衝突。混乱の中、日本人居留 民12人が虐殺される事件が起きたため、日本政府は第3次山東出兵を声明、済南を攻撃して選挙した。翌年中国政府との協定が成立し、日本軍は撤兵したが、 この事件を契機に中国の抗日運動が激化した。

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このページは、宝徳 健が2006年5月 1日 17:14に書いたブログ記事です。

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