どの本よりもわかりやすいギリシャ神話

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   以前、「どの本よりもわかりやすい古事記」を掲載しました。このブログをリニューアルしたので、その古事記については、このブログの中の「カテゴリー」で 全編確認することができます。以前書いていた古事記は、「神代」でした。古事記の「人代」を書いてくれというご要望も強かったのですが、ちょっと目先を変 えて「ギリシャ神話」なんかどうでしょう(人代はいずれ書きます)。古事記の話をしたら、いろんな方からそれは歴史ではなくて神話でしょ?と言われます。 日本の古代に生きた先輩たちが自分たちの国について、一生懸命考えた神話ですが、その国によって内容が違います。つまり、歴史なのです。神話の世代から歴 史が続いている日本の素晴らしさを認識する必要があります。でも、比較文化として他国の神話を見てみるのもいいかも。今の人間に神話なんか創造できません よね。それほど昔の人の方が優れていることになります。では、はじまりはじまり~。順不同ですよ~。
   プリアモスという王様がいました。プラモスに王子パリスが生まれました。王子が生まれる前に、預言者が現れて、「この子はやがて父親の国を破滅させ るであろう」と予言しました。王は恐れて、王子を奴隷に与え、山の中に捨てるように命じました。奴隷は、命令通りに、子供を山奥に捨てましたが、メス熊が 乳を与えて養いました。5日後に行ってみると、王子は木のほらですやすやと可愛い顔をして眠っています。とてもあどけない美しさで。

 奴隷はあまりの可愛さに連れて帰り、パリスと名づけて育てました。月日が流れ、パリスはとても立派な若者に育ちました。容貌もすばらしく知識・体 力もばつぐんです。あるとき、パリスが働いていると、目の前に三人の女神が現れました。

 ヘラ(全知全能の神ゼウスの妻)、アテネ(知恵の神)、アフロディテ(愛の神:ローマ神話のビーナス)です。三人の女神は、三人の中で一番誰が美 しいか、それをパリスに決めてもらおうとしたのです。

 パリスが戸惑っていると、女神たちはそれぞれ、おいしい誘惑の条件をつけてきます。
ヘラ「私を選んでくれたら、地上で一番素晴らしい国の支配者にしてあげるわ」
アテネ「私を選んでくれたら、地上で一番の知恵者にしてあげるわ」
アフロディテ「私を選んでくれたら、地上で一番美しい女をあなたの妻にしてあげるわ」

 さあ、パリスは迷います。よく考えると、アフロディテは愛の女神と美の女神を兼務していたので、アフロディテを選ばないとつじつまが合わないし、 アフロディテのとろけるような美しさに魂を奪われ「あなたが一番です」と言ってしまいました。

※ちなみに、アフロディテとビーナスは神話の発展上同一人物と考えられることもあります。アフロディテ、ビーナスから生まれた肉欲的な言葉はたくさ んあります。「アフロディジア:性的興奮」「アフロディジアック:催淫剤」「ビーナス:女性のあそこ」「ビーナス帯:貞操帯」「ビーナス病:性病」

 さて、他の二人は面白くありません。この屈辱を忘れてなるものか、いつの日かパリスの故国、トロイアを滅亡させてやる、と口ぎたなく、ののしって 帰っていきました。ここから、トロイの木馬につながってきます。これが、神話の世界だと考えられていたのが、考古学者シュリーマンが、なんと発見したので す。すっごいうれしい事実ですね。

 
 さて、アフロディテは約束した世界一の美女をくれません。パリスは、まあいいや~と考えて、別の女性を奥さんにして幸せな日々をすごします。

 そうこうするうちに、プリアモス王が競技大会を催すことになり、パリスの飼っていた牛が強制的に景品として持っていかれてしまいました。パリスは 悲しみますが、「自分が出場して取り返せばいい」と競技大会に参加しました。パリスは順調に勝ち進み、決勝まで進出します。決勝の相手は、プリアモス王の 王子ヘクトルです。つまり、兄弟です。プリアモス王にはたくさんの兄弟がいたのですが、下の方の妹に、カッサンドラがいました。

 兄弟の戦いは熱戦が続き、ついにパリスが勝利をおさめます。奴隷の子供に負けたヘクトル王子は我慢がならず、パリスをその場で殺そうとします。そ の時、カッサンドラが「お兄様、待って、この人は私たちの兄弟よ」と言います。

 王もパリスの母(二番目の妻)もびっくりして調べてみると、確かに自分たちの子供です。予言を忘れて、再会を喜び合いました。パリスは王子として 迎えられたのです。

 王子として迎えられたパリスは、プリアモス王から命令を受けます。十年以上も前、プリアモス王の姉がギリシャにさらわれていって、ギリシャでさび しく暮らしているのです。この、姉を力づくでも奪い返せとの命令です。
 十数年前と違い、国力をつけたトロイアは、強大な艦隊を引き連れてエーゲ海を西へ進みます。目指すはスパルタ。

 スパルタ王メネラオスは、その時あいにく国を離れていました。留守を守っていた王妃が絶世の美女ヘレネです。夫の不在が続き、性的にも欲求不満で あったこの美女は、侍女たちがうわさしている、敵の王子の美貌が気になってしかたがありません。パリスがキュテラの神殿に参拝するといううわさを聞き、口 実をつけてヘレネも神殿にいきます。そこで、みたパリスにヘレネは心を奪われてしまいます。パリスの方も、ヘレネのあまりの美しさに「あっ、アフロディテ が私に約束した美女だ」と勝手に思い込んでしまいます。そして、その夜、スパルタの宮殿に押し入り、ヘレネを奪ってスパルタの地を立ち去ってしまったので す。ヘレネも迷いましたが、パリスにめろめろになったので、「まっ、いっか」という感じでした。

 当然ながら、スパルタ王メネラオスが激怒します。実は、絶世の美女ヘレネには求婚者がたくさんいて、希望者が全員立候補してヘレネに相手を選ば せ、ヘレネが選んだあとは、絶対に文句を言ってはいけないこと、もし、ヘレネが誰かに奪われたら、全員で奪い返しに行くことが決められました。ですから、 ヘレネが奪われたので、ギリシャの諸侯は、みんなで対トロイア軍を編成しました。

 一方のパリスは、ヘレネを奪った後、トロイアに帰らずに、エーゲ海の諸島に新婚旅行に出かけて、ラブラブ生活を送っていました。トロイアでは、パ リスの軍団は嵐かなんかに会って、全滅して帰ってこないのだとばかり思っていましたから、ギリシャ軍がきたときびっくりしました。

 プリアモス王は、ギリシャと姉を交換しようと提案しますが、ギリシャ軍は受け付けません。ついに、ここにあの有名なトロイア戦争の幕が切って落と されたのでした。じゃじゃ~ん。

 この戦争の悲劇的な結末を予測したのが、娘のカッサンドラ。カッサンドラには予知能力があったのです。「お父様、トロイアの町が真っ赤に燃えてい る様子が目に浮かびます。戦争はおやめになって」。
 
 でも、トロイアの勇敢な兵士たちは耳を傾けません。

 実は、カッサンドラが予知能力を持ったのには理由があります。ギリシャ神話の戦いの神アポロンが、カッサンドラの美しさを見て、抱こうと思いまし た。カッサンドラにアポロンが近づいたとき、カッサンドラは警戒しますが、アポロンが「私に身をゆだねたら、予知能力をあげるよ」と言ってくどきます。そ して、抱く前に予知能力を与えてしまったのです。さあ、抱こうというとき、カッサンドラはその予知能力を使って、アポロンに抱かれたら自分は幸せになれる かを予知します。すると、幸せになれず、ぼろぼろになってアポロンに捨てられている姿が予知できたので、逃げてしまいました。アポロンは悔しがりますが、 与えた物は取り返せないのが、ギリシャの掟です。悔しいアポロンは、カッサンドラの予言を誰も信じないようにしてしまいました。これがトロイアを滅亡に導 きます。

 何年も続いたトロイア戦争で、トロイア有利に戦況が進みます。そこで、ギリシャ軍が用いた作戦がかの有名なトロイの木馬作戦です。

 トロイの木馬をトロイアの兵士たちが場内に引き入れたとき、最も反対したのがカッサンドラでした。兵士たちが木馬から続々と出てくる姿が予知でき たのです。でも、アポロンのしかけ通り、誰もカッサンドラの言うことに耳をかしません。

 トロイの木馬を場内に引き入れた戦士たちは、戦況の良いことで、祝杯をあげはじめます。そして・・・・。そのとき、カッサンドラが予知したこと は、戦争に敗れ兄弟が死に、自分は奴隷となって、ギリシャ人に犯されている姿なのでした。

  アフロディテがパリスに約束したことはパリスがヘレナを得ることで果たされました。ヘラとアテネが嫉妬のあまり言ったこと、「トロイアを滅ぼ す」も、現実のものとなってしまいました。

 ヨーロッパの神話を見ると、戦争やセックスといったもが、身近に描かれていることに驚きを感じます。
 でも、面白かったでしょ? 次を楽しみに。

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このページは、宝徳 健が2006年10月 7日 15:23に書いたブログ記事です。

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