和歌

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 平成二十二年八月二十日、歌人の河野裕子さんが六十四歳で亡くなりました。私の誕生日だったので、よく覚えています。今年の一周忌に河野裕子さんの遺文集やエッセイが次々と出版されました。そのひとつに「たとえば君 河野裕子・永田和宏著 文芸春秋社」があります。
 河野裕子さんと、その最期を見届けた、夫 永田和宏さんが、四十年のかかわりを詠んだ三百八十首の和歌とエッセイをまとめたものです。

 河野裕子さんは京都女子大学、永田和宏さんは京都大学の短歌会を通じで出会いました。最初の歌が、冬の京都の植物園でのあいびきから歌い始められています。

 たとへば君 ガサッと落ち葉 すくふやうに わたしをさらつて 行つてはくれぬか(裕子)

 裕子さん、すごいですね。荒削りですが、なんと迫力のある歌でしょうか。わたしたち男には、女性の真の心はわかりません。何かの本に、「男性が女性の心をほんの少しでも除き見ることができたら、瞬時に気が狂うであろう」と書いてありました。くわばらくわばら(笑)。

 きにみ逢う 以前のぼくに 遭いたくて 海へのバスに 揺られていたり(和宏)

 ねっ、男性のほうがナイーブでしょ?

 和歌って素敵でしょ? 難しい決まりなんてありません。自分の心で感じたことを詠めば、うまいへたはないのです。みなさんもやりませんか?

 河野裕子さんに乳がんが見つかりました。

 今刈りし 朝草のやうな 匂ひして 寄り来しときに 乳房とがりゐき

 あの時の 壊れたわたしを 抱きしめて あなたは泣いた 泣くより無くて

 裕子さんは、最期の日まで詠み続けます。寝ながらティッシュペーパーにでも薬袋にでも、そこにあるものにはなんでも・・・。

 そして、いよいよ筆圧を握る力がなくなると、話をするように歌の言葉をつぶやきました。家族はそれを書き取ります。最期の一首です。

 手をのべて あなたとあなたに 触れたとき 息が足りない この世の息が

 もう、だめ。最期の命の叫び。涙があふれます。和歌がいかにすばらしいかお分かりいただけると思います。「たとへば君」。ぜひ、お読みください。

 では、拙首です。

 裕子さんの 命の叫びに 触れながら 人の絆の 強さを学ぶ

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このページは、宝徳 健が2011年10月 2日 06:43に書いたブログ記事です。

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