委託者が亡くなったら?

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 父親の遺言により、父親の死亡後の財産は相続発生後に信託されて受益者は母親に指定されていたとします。娘さんが、信託契約を変更して受益者を長女である自分にしたいと言ってきました。信託契約を変更することは可能でしょうか?
 結論から申し上げると、受益者の変更は、信託の目的に反するものとされています。

 信託にとって重要事項の変更には委託者の合意が必要とされています。遺言によって信託をした委託者が亡くなった場合には、原則として委託者の地位は相続されません。従って、委託者は不在です。このような場合には、委託者の合意を得ることはできないので、信託契約を変更することはできません。

 もう少し詳しく。

 信託の変更は、原則として委託者・受託者・受益者が合意すればどのような変更もできます。また、受託者を害さないのであれば、委託者と受益者が合意すれば大丈夫です。

 また、信託の目的に反しない変更の場合には、委託者の合意は不要です。さらに、受益者の利益に適合する変更であれば、受託者が単独で行うこともできます。

 さらに、信託行為(信託契約等)において、変更について別段の定めをしておけば、その定めに従って変更することができます。

 前述の場合のように、委託者の相続はなされいのですが、遺言によって「委託者の地位が承継される旨」を記載していれば、委託者の地位が遺言の定めによって指定された者に移転します。ですから、委託者の地位が娘さんに承継されると遺言書に指定されていたなら、委託者である娘さんと受益者であるお母さんが、合意すれば、信託の内容を変更することができます。

 こういうこともできます。遺言に「信託の内容の変更は受益者が単独ですることができる」と規定しておけば、委託者が存在しなくても、受益者であるお母さんが単独で受益者を変更することのできます。

 遺言における遺産分割の内容を変更するためには、相続人全員の合意が必要ですが、信託の場合には、きちんと記載されていないと変更できないことになるので、遺言による信託を活用する際には注意が必要です。

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このページは、宝徳 健が2012年7月15日 09:15に書いたブログ記事です。

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