第六十五回正倉院展

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 光明皇后が献納された物の中に「御床(おんとこ)」があります。
 ベッドです。
御床写真2

 聖武天皇と光明皇后が使用したふたつのシングルベッドを記して宝物リストは終わります。

 宝物の名称を記し終えたあとに、甲尿皇后は献納した理由を自ら述べられています。キーワードは「触目崩摧」です。目に触れたら崩れ摧(くだ)けてしまう。

 聖武天皇が大切にしていたものが手元にあると、目に触れる。目に触れると、天皇が元気だった昔のことが思い出され、辛くなる。辛くて悲しくて、悲しみに耐えられず、心が崩れ摧けてしまう。そうであるなら思い切ってすべての品々を大仏様に献納し、聖武天皇の冥福をお祈りしよう。という意味です。

 遺愛の品の中に「長斑錦御軾(ちょうはんきんのおんしょく)」があります。御軾とは脇息、つまり、ひじかけです。
斜姿(新写分)

 聖武天皇が使われていたひじかけです。よく見ると少し傾いています。聖武天皇がいつも同じようにもたれていたからです。その歪みに気づいたとき、痛みのような悲しみが光明皇后の胸の奥に走ったのでしょう。正倉院の宝物は一人の女性の堪えがたい悲しみから生まれて行きました。

愛するが ゆえ耐えられぬ 思ひあり 長い歴史の 宝物語る

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このページは、宝徳 健が2013年10月31日 07:05に書いたブログ記事です。

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