金閣寺(歴史的假名遣ひと正しい漢字)

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 知らない言葉や漢字ばかりです。敗戰後の不埒な教育がいかに間違つてゐるかがわかります。つづきです。
「あれは、一體、生きてるんやろか」
「僕も今さう思つてゐたんだ。人形みたいだなあ」

と鶴川は勾欄にきつく胸を押しつけ、目を離さずに答へた。

 そのとき奥から、軍服の若い陸軍弛緩があらはれた。彼は禮儀正しく女の一二尺前に正坐して、女に對した。しばらく二人はじつと對坐してゐた。

 女が立ち上がつた。物靜かに廊下の闇に消えた。ややあつて、女が茶碗を捧げて、微風にその長い袂をゆらめかせて、還つて來た。男の前に茶をすすめる。作法どほりに薄茶をすすめてから、もとのところに坐つた。男が何か言つてゐる。男はなかなか茶を喫しない。その時間が異樣に長くて、異樣に緊張してゐるのが感じられる。女は深くうなだれてゐる。・・・・・

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このページは、宝徳 健が2014年11月26日 05:08に書いたブログ記事です。

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