竹中平蔵氏講演会⑤

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   さて、最終回は日本の景気が今後どうなるかという予測と安部内閣への提言です。平成19年1月30日にホテルニューオオタニ大阪で行われた講演会の内容を宝徳がまとめたものです。
  新聞紙上で景気回復の実感を国民が感じられないという記事がよく掲載される。この原因は、成長とデフレである。実感とは名目であり、給料の金額その ものがあがることである。今はデフレなので、給料があがらないから実感がわかなくなっている。デフレの克服はとても大切である。

 日銀は消費者物価指数(以下、CPI)が上昇しているからデフレを克服していると言っているがまだまだその状況にいたっていない。そもそもCPI から、変動が大きい、エネルギーと生鮮食品を除いて計算するのは世界の常識である。これをコアCPIという。今は公表しているがこの数値は日本では公表し ていなかった。総務大臣になったときに、すぐに公表するように指示すると官僚の抵抗があった。「一年後に公表します」「だめだ」「では半年後に」「だめ だ」「では、一ヵ月後に」「では、できる人に代わってもらいます」といったらすぐに公表された。 コアCPIは-0.4% コアGDPデフレータにいたっ ては-0.7%である。イザナギ景気では、コアCPIは、2.2倍になった。今は、1.4倍である。(何年前と比べてを宝徳がメモし忘れました)

 だから、日本の経済をより健全化するためには、もっと対策が必要なのである。日銀が市場に供給するお金のことをベースマネー(マネタリーベース)という。そのお金が対前年20%減なのである。これではデフレは解決しない。

 2007年の日本経済は、重要な分かれ目にきているが、予想としてはゆるやかに景気上昇が続くであろう。理由は以下の3点。

①米国経済が減速しないと考えられる。資産価格が低下することによって、資産家の消費が減退することを負の資産効果というが、これがそれほど大きな影響にならないと考えられる。

②日本の景気成熟度がまだ低い。ストックの循環サイクルからいうとまだ、景気回復の途上にある。ここで、企業だけが儲けているという議論があるがお かしい。この事実は、成熟度が低いという証拠である。つまり、労働分配率が5年前の73%から65%に低下しているというのである。しかし、1990年 60%だった労働分配率は2000年には73%になっている。バブルがはじけた後も、企業は労働者に賃金を払い続けたことと成る。それが調整されているだ けである。

③団塊の世代が大量退職する。退職金の額は、年間2~3兆円大きくなるといわれている。これが市場に回り、市場は成熟期を迎える。

 さて、今後の日本経済の課題である。例を述べる。今までは知恵を戦う武器として大切にしてきた。しかしながら、本来ならば、知恵とは人と人とを結 びつけるためのものだった。人類がはじまってからの100冊の偉大な本を「グレートブックス」というが、これを講義している大学がある。ただ、大学をつく るつくらないということではなく、このように、知恵の観点を変えることで新たなマーケットが創出される可能性は無限大にある。

 最後に、安部内閣について

 安部総理は非常に高いパッションを持っている。しかしながら、「戦略は細部に宿る」である。周りにいる人間が2倍3倍の努力が必要である。

 例えば、社会保険庁の問題である。国税庁に社会保険料の徴収を一元化移管しようということで合意していたはずが、いつの間にか、官僚のずるい知恵で、移管が委託にすりかわってしまった。これでは社会保険庁改革ができない。社会保険庁を生き残らせる方向になってしまった。

 もうひとる例を。グレーゾーン金利の問題である。あの政策決定以来、日本は世界で変な目でみられるようになった。金利統制=価格統制である。資本 主義の国ではやってはいけない。金利法制を見直すのではなく、倒産法制をみなおすべきだった。このしっぺ返しは必ずくる。貸金業者がもうつぶれている。何 が大切なのかという「戦略は細部に宿る」考え方が安部内閣に大切。

 内閣にほころびが見えるのが残念。このままでは、せっかくの首相の強いパッションからもたらされようとしている、新たな成長の機会が奪われる恐れがある。

 ご清聴ありがとうございました。

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このページは、宝徳 健が2007年2月11日 06:54に書いたブログ記事です。

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