百人一首 二十

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 今日はスキャンダルの歌です。この百人一首で紹介した陽成院という御方がいます。藤原氏によって、天皇にまつりり上げられ、そして、藤原氏によって退位させられた方です。其の方の子が元良親王です。陽成院が天皇退位後生まれた子なので、当然天皇になるチャンスはありません。

 そのためかどうかは知りませんが、元良親王(もとよししんのう)は、源氏物語 光源氏のモデルのひとりとも云われるほどプレイボーイになりました。

 私には、プレイボーイと云うものがどういう人かがわかりません。
 たくさんの女性と接して、一人ひとりに本当に本気になれるのだろうか? 一人ひとりはどうでもよいのであろうか? プレイボーイである元良親王のこの和歌に接すると、一人の女性を本気で愛した気持ちが伝わってきます。

侘びぬれば 今はた同じ 難波なる 身をつくしても 逢はむとぞ思ふ

 むか~し、付き合っていた女性(もちろん独身の頃)に「毎日電話してほしい」と云われ、対応することができませんでした。今ならメールがあるのですが、その頃は携帯もない頃です。たった一人に、其のぐらいの事もやれない私は、決してプレイボーイにはなれません。

 たくさんの女性と浮名を流しながら、一人の女性にこのような激しい歌を送れるとは・・・。参った・・・。

 「侘びぬれば」は「悩み苦しむ」ことです。どんなに悩んでも、こういう苦しい立場に置かれたからには、もうこれ以上事態が悪くなることはない。だから、あなたに会おうまでが「侘びぬれば 今はた同じ」「逢はむとぞ思ふ」です。

 「身をつくしても」が「身をほろぼしても」です。それと大阪湾名物「澪標(みおつくし)」を掛けています。だから「難波なる」です。澪標は船に航路を示すために海に打ち込まれた杭です。「君こそはわが人生行路の道しるべ」ときざに云っています。口説いていますね~。

 さて、プレイボーイ元良親王が、これほど愛した女性とは誰か。宮廷スキャンダル!

 宇多天皇の后のひとり 京極御息所(きょうごくみやすどころ)こと藤原褒子(ふじわらのほうし)です。いくら平安時代が戀(恋)多き時代とはいえ、天皇の后を奪うなど正気の沙汰ではありません。スキャンダル発覚以後、二人は逢うことを禁じられます。そのときに元良親王が褒子に送った歌です。

 元良親王は、大和物語という古典にもたくさん登場します。恋の逸話として。ついたあだ名が「一夜めぐりの君」です。関係した女性は三十人以上。すげぇ。

 源氏物語の主人公光源氏も、母 桐壺に似た藤壺(天皇の后のひとり)と戀に落ちます。そして生まれた子が天皇になります。藤壺は悩み苦しみます。

 光源氏の作者である紫式部は、宮廷のそのような出来事をよく観察していたのですね。

たくさんの 流す浮名の その中の ひとつひとつが 真実の戀(恋)

 私にはできないや。 だいいち、もしたくさんの女性と付き合ったら(そんなことはありえないけど)、呼ぶときに名前を間違えて、ぶっとばされそうです(笑)。プレイボーイってすごいや。

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このページは、宝徳 健が2014年2月21日 00:01に書いたブログ記事です。

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