日本語の學習（皇紀弐千六百七十七年一月廿壱日　參）

　・・・・・・・私が今までただ永々と、ラヂオのことを語つてきた、と人は思ふであらうか？

　實は私が語つてきたのはラヂオのことではない。小説のことである。小説は現在なほ大部數の出版に耐へ、ラヂオほどの日蔭者になつてゐないやうに見えるけれど、本質的にはラヂオと同じ運命を荷つてゐる。

　元氣な若い人たちにとつては、小説は、相手の要らない、或る手輕な想像力のクイズであるが、もちろんさういふ點ではテレビのはうが數等上であつて、小説はテレビよりも永い持續した興味と、ディテールと、テレビよりも高度に觀念的な（それだけに高度に猥褻な）性的描寫をなしうる點で、わづかにこれに對抗してゐる。