どの本よりわかりやすい南総里見八犬伝 再41(皇紀弐千六百七十七年八月十六日 四)

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 えっと、浜路(はまじ)が左母二郎(はもじろう)の嫁になることを観念し、そのかわりに村雨丸をみせてくれと左母二郎にお願いしたところまででした。
 左母二郎は「さあ見てごらん、抜けばたちまち水気がほとばしり出るこの銘刀を」と言いながら浜路に村雨丸を手渡しました。浜路は「夫の仇!」と叫びながら、刀を突き出します。危うく免れた左母二郎は小刀を抜いて、浜路の乳房の下あたりを切り付けました。

 浜路があっと悲鳴を上げたところを、村雨丸を叩き落し髪をひっつかんで、地面に浜路をたたきつけました。

左「憎さも憎し、このあまめ。親切にしてやればつけやがりやがって。そんなに信乃が忘れにがたければ、あの世で会うがいい。おれの言うことをきかなんだら遊女に叩き売ってやるつもりだったが、売り物の玉に傷をつけてしまったからにゃ、もう売れねえ。おれにしたしうちの報いはなぶり殺しだ。いいたいことがあったら今のうちに言え!」

 左母二郎はこう言うと、浜路をひきずって、向こうへ突き飛ばします。村雨丸はさやに収めて、小刀を地面に突き刺しました。自分はそばの木の切り株にこしかけました。

 ときどき強く燃えて明るくなる野火のゆれうごく光を浴びて、急所の深手で息たえだえの浜路は、ようやく起き直って、乱れ髪の顔にかかるのを振り払いながら言いました。

「おのれ、恨めしいぞ左母二郎。わが夫を死地に落としいれたこの極悪人目。一太刀浴びせようとしたが、望みはかなわなかった」

 左母二郎はあくびをして「いやいや、ながながと恨み節をご苦労様。褒美として一思いにこの世から消してあげよう」

 と地面の小刀を抜きました。でも、「待て待て、浜路の恋焦がれている村雨丸で引導を渡したやろう。浜路、さぞうれしかろう」と言いました。なんちゅう、悪いやっちゃ。

 左母二郎が浜路を引き寄せて、胸元を誘うと村雨丸をきらりと振り上げました。そのとたん、野火の穴から手裏剣が飛んできて、左母二郎の左の胸から背中に抜けるまで打ち込まれました。左母二郎は刀を落として、「わっ」と叫ぶと共にのけぞりました。

 なんなんだ、いったい。どういう展開なんだ。ちょっと変わった展開になります。次回を期待してください。つづく。

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このページは、宝徳 健が2017年8月16日 08:30に書いたブログ記事です。

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