どの本よりわかりやすい南総里見八犬伝 再42(皇紀弐千六百七十七年八月十七日 弐)

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 左母二郎(さもじろう)が浜路にとどめをさそうとしたときに、火の穴から手裏剣が飛んできたところからでした。
 手裏剣は、左母二郎の左の乳の下から背中に抜けるまで打ち込まれました。左母二郎は、刀を落として「わっ」と叫ぶとともにのけぞりました。
 このとき穴から忽然と現われた者がいます。それは、例の行者だったのです。な~るほど、そういう展開か~。って、まだまだ意外な展開が・・・。

 行者のいでたちは、さっきと一変して、南蛮鎖の着込み腹巻を隙間無く着込んだ立派な武者姿ではありませんか。左母二郎が息を吹き返して、刀を杖に身を起こして、よろめきながら斬りつけようとすれば、あちらこちらと体をかわし、刀を奪い取るや、左母二郎を切り殺しました。そして、銘刀村雨丸を見て。

「なるほど、音に聞く村雨丸の宝剣。抜けば玉散る露か雫か。今はからずもかかる銘刀がわが手に入ったのは、何かのおぼしめしだろう」

 さて、その場面を額蔵が見ていました。額蔵は、信乃と一緒にいましたが、ある幼児を思い出して、帰りを急いでいました。そして、その途中、円山塚の行者の行いに出くわし、影から詳しく見ていたのです。

 行者の方に話を戻しましょう。行者は、刀を鞘に納めると、浜路を引き起こしました。「しっかりしろ」と耳元で叫びます。浜路は気がついて、手を振り放そうともがきますが、行者は言います。

「心配するな。思いがけずにめぐりあった。俺は、そなたの腹違いの兄 犬山道松忠与(いぬやまみちまつただとも)というものじゃ。わけあって、去年の秋から姿を変えて名を改めて
行者としてゆく先々であのような術を見せ銭を集めていたのだ。それもこれも、君と乳の仇を報いる軍用費の調達のためじゃ。そして、先ほど、この男とそなたの話を聞いていると、自分が聞かされていた腹違いの妹の話と同じだったのじゃ。妹よ、せっかく再会できたのに、そなたの命は尽きようとしておる。何か言い残しておくことは無いか」

「兄上様でしたか。この会うは別れの対面。かなしい限りです。ただの一つの願いは、いいなずけの信乃の銘刀村雨丸を信乃へお返し願えればと。今、信乃は、偽者の村雨丸を献上しに行って、困っているはずです。どうか、どうか、兄上様、お聞き届け下さい」

「夫をおもうそなたの気持ちを聞き入れてやりたいが、私にとって、あだ討ちが先だ。この村雨丸であだ討ちがかなったときに、この村雨丸を信乃殿に変えそう」

 浜路は、その言葉を聞いて、がっかりして息絶えてしまいました。

 犬塚忠与は、妹をかわいそうに思いながら、火の穴に浜路を入れて荼毘に付しました。

 さて、その一部始終を額蔵が見ています。次回のお楽しみ。

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このページは、宝徳 健が2017年8月17日 04:35に書いたブログ記事です。

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