戰國策 再56(皇紀弐千六百七十七年十二月二十九日 四)

| コメント(0) | トラックバック(0)
 今回も斉の孟嘗君の食客のひとり馮諼(ふうけん)の逸話を紹介します。本当にスケールが大きくユニークな人物です。今の、こっけいなほどに不埒な中国とはまったく違いますね。
 テーマは「おもいがけぬみやげ」です。

 孟嘗君は食客たちにこんな回状をまわしました。
―わが領地、薛(せつ)におもむき、貸し金取立てに当たる希望者をつのる。ただし、会計に堪能な人物たること―

 すると馮諼(ふうけん)が回状に記名して申し出ました。孟嘗君は「はてな」と思いました。

「だれだったかな、こいつは。あ~、そうか、いつか"長剣よ、帰ろうか"を歌った男だ。やはり只者ではなかった。」

 孟嘗君は馮諼を呼んで謝りました。

孟「このところ仕事に思いあぐね、国政にかまけて、先生には失礼をいたした。それをお腹立ちにもならず、薛(せつ)まで貸し金取立てに行ってくださるとのこと。まことでしょうか」
馮諼「まいりましょう」

 馮諼は、みじたくを整え、車に証文を積んで出かけることになりました。
馮諼「貸し金の取立てがすんだら、何を買って帰りましょう」
孟「私の所に不足しているものが欲しい」

 馮諼は薛まで車をとばし、現地の役人に命じて、負債のある者を集めさせました。一人残らず集まって証文を合わせた。馮諼は立ち上がり、「ご領主さまの命令だ」といってその場で証文を焼き捨てました。民衆からは万歳の声が起こりました。

 馮諼は、都にはせもどり、朝、早々と取次ぎを請いました。孟嘗君は事の速さにびっくりしました。

孟「取立てはすみましたか。それにしても、お早いおもどりで・・・」
馮諼「はい」
孟「で、何を買って来ました?」
馮諼「この邸に不足しているものといっても、宝物が山と積まれ、厩には馬が、別棟には美人が満ち溢れています。思うに、不足しているのは恩義だけです。恩義を買って来ました」
孟「恩義とは・・・?」
馮諼「あなたさまは、薛の領主として、あのちっぽけな薛の人民をしぼりとるばかりで、一向に慈しみません。わたしはあなたの命令といつわり、取立てをやめて証文を焼き捨てました。すると、期せずして万歳の声が起こりました。恩義を買ったとはこれです」
孟「まあ、お引取り下さい」

 このとき、孟嘗君は、すこぶる面白くありません。でも、この馮諼が、孟嘗君がピンチのときに大活躍するのです。お楽しみに~。

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://www.soepark.jp/mot/mt/mt-tb.cgi/7347

コメントする

月別 アーカイブ

Powered by Movable Type 4.261

このブログ記事について

このページは、宝徳 健が2017年12月28日 20:57に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「命の手紙 71(皇紀弐千六百七十七年十二月二十九日 參)」です。

次のブログ記事は「三十年目標(皇紀弐千六百七十七年十二月二十九日 五)」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。