カウンセリングの技法 再5(皇紀弐千六百七十八年二月五日 弐)

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 過去の記事を再掲しています(20100908)。

 
 さて、少しまとめておきましょう。カウンセリングには三段階がありました。

①リレーションをつくる
②問題の核心をつかむ
③適切な処置をする

でした。そして、リレーションをつくるためには、「受容」と「支持」が不可欠でした。前回まで、「受容」を勉強しました。今日から、「支持」を学びましょう。
 受容するために傾聴だけをしても十分ではありません。相手の気持ちがわかるにつれて、「そうはそうだ」「それは大変だったなぁ」「よくまあ、今までがまんしていたものだ」という感情がカウンセラーにはわいてきます。同調したい気持ちですね。これを「支持」といいます。

 受容が己を無にしている状態だとすれば、支持は己を表現している状態です。カウンセラーがあまり中立になりすぎると、感情交流の無い面接になってしまいます。

 あるカウンセラーの経験談を書きます。

クラ「私は冷たい女です。口先だけの女です。私が姑を「お母様、お母様」と言うので、近所の人は実の母娘のようだとほめてくれるのです。しかし、私としては実はちっとも母という感じがしないのです。娘のように振舞っているのですが、ちっとも娘のような感じになれないのです。だから、私は口先だけの情けのない女です」

カウ「それは当たり前ですよ。情のない女だというけれどそれはそうですよ。姑というのはもともとよそのおばさんなんだから。一緒に住んだからといって急によそのおばさんが、母のように感じられないのは当然ですよ。また娘さんのようにというけれども、もともとよそのお嬢さんだったあなたが、急に娘になれないのは当然ですよ。情というのは幼少期からおしめを替えたり、お風呂に入ったりしてだんだんきざしてくるものですから」

 このカウンセラーの行動が「支持」です。

 その女性は、帰宅してから、この言葉を思い出し、行動したところ、前よりもずっと感情表現が自由になり、生活が楽になったそうです。

 支持は一種の承認です。

 でも、これまた簡単そうでなかなか・・・。それはなぜか・・・。

 私たちは、日常生活で人から水をさされたり、批判されたり、けちをつけられたりすることは多いのですが、それでよいのだと認められることは意外と少ないですね。「You are OK」といわれることが少ないのです。

 そなぜ私たちは「You are OK」と言われることが少ないのでしょうか。それは、たぶんに劣等感のせいです。劣等感があると、それを克服するために「引き下げの心」が働きます。

 「あの店は業績はいいけれど、こういう悪いところがある」「あの人は優秀だけど、こういうところに欠けている」「あいつはなかなか良いが、あの点はだめだ」「あの人はなまじお金があるから相続争いで大変だね」など、何かしらの観点から「引き下げの心理」が働きます。

 ということは、カウンセラーに劣等感があると「支持」が不自然になります。それは大変だねと口では言いつつも、心の中で何かのつぶやきが出て、自分を納得させるために引き下げの心理を働かせます。

 幼児性と同じく劣等感も万人に共通した傾向です。カウンセラーは自分の劣等感を意識し、さらには、この「引き下げの心理」を自覚しておくことが求められます。意識していれば、無意識に出るよりも、引き下げの心理に巻き込まれることが少ないからです。

 心に、相手の、欠点が出てきたら、自分の何の劣等感がこの引き下げの心理を出しているのかを考えてみてください。そうでないと支持にいたらず、相手の行動を変容させるというカウンセリングにいたらないからです。

 では、何でもかんでも支持すればよいのか。違いますね。次回はそのあたりを勉強してみましょう。

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このページは、宝徳 健が2018年2月 5日 09:27に書いたブログ記事です。

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