源氏物語 再12(皇紀弐千六百七十八年四月十七日 五)

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 光源氏が紀伊守(きいのかみ)の家で、麗しい少年と出逢つたところまででした(20160629)。

光「この子は?」
紀「知り合いの末の子です。早くに父を失ひ、姉が私の父の後妻に入つたものですから、かうして私のところへ來たりしてゐるのです」
光「では、この子の姉が、貴方の義母になるのですか」
紀「さうです」

 さう、此の子の姉が、第三帖のヒロイン、空蟬なのです。
光「(弟がこれほどなら姉さんもわるくはあるまい)」

 夜が更けて周圍が寝静まると、光源氏は行動を開始します。弟と姉が小聲で話してゐるのを聞いて姉の休むところを知り、内鍵のかかつてゐないのをよいことに寢所に忍び寄ります。女は自分に仕える女房が來たのかと思つてすきをみせますが、光源氏は、あまりにもことがうまく運ぶので、「私の思ひが届いたやうな氣がする」とうぬぼれて、云ひ寄ります。おいおい、人妻だつつうの。それも本人の家で。

 女はびつくりします。噂を聞いて素敵な人だとは思つてゐましたが、いきなりこんな仕打ちに出られるなんて・・・。軀がすくみ聲もでません。「人違ひでは」とささやくのが精一杯です。

 光源氏はいさいかまはず口説きます。途中、人が氣づいても「朝になつたら迎へにきなさい」と帰します。空蟬の絶對絶命~~~。

 まあ、現代の我々からすると、その口説き文句には歯がういてしまひます「ずつとお慕い續けてゐた」「決して浮氣心ではありません」。

 空蟬は、恥じ入りました。「(ああ、私はこの方に口説かれるやうな立場にはない。の軆分も違ふし、人妻だし)」。「(どうせひとときのたはむれだらう)」と思ふと悲しくもなります。

 でも、あれよあれよと惱んでゐるうちに、契りを交わしてしまひ、一夜が過ぎます。

光「どうか心を許してください。これもなにかの宿縁。戀を知らない娘じゃああるまいし、いつまでも邪險にされては私はつらい」

空「かりそめのことです。せめて今夜私に逢つたことは誰にも云はないでおいてください」

 空蟬はかたくなになつてしまひました。

 う~ん、男の美學と女の現実が微妙に食い違つてゐますね(笑)。

 軆の憂さを 嘆くにあかで あくる夜は とり重ねてぞ 音も泣かれける(空蟬)
「情けない我が身を嘆いて夜を明かした朝は、鳥の声も私の鳴く声に重なって聞こえます。」

 う~ん、和歌は女性を口説くのにぴつたりだ。遅かりし。 つづく

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このページは、宝徳 健が2018年4月16日 21:07に書いたブログ記事です。

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