入院中でも懲りない男 事故篇 5(皇紀弐千六百七十八年八月十四日 四)

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 手術前5分の大事件からでした。

 病室から手術室に歩いていきました。看護師さんに付き添はれて。

 手術室の入り口には、手術看護婦さんが4人いました。看護婦さんは、「手術看護婦」「檢査看護婦」「病棟看護婦」「外來看護部」「ICU看護婦」などに分かれます。手術看護婦は別名「オペカン」です。

 看護婦基準と云ふのがあります。15對1とか10對1とか7對1とかです。7對1といふのは、患者七人に對して看護婦1人(平均)です。夜間、昼間があったり、ICU看護婦は、2對1ですから、7對1など本當に實現が大變です。でも、國からの報酬が格段に違ふのです。

 閑話休題。その4人のオペカンさんが「寳德さん、本日は、寳德さんは何の手術をされますか?」と聞きました。これは正しい手順で、しょっちゅう聞かれます。手術だけではなく、點滴、藥を渡すときなどなど。間違ひがないやうにと、本人が自覺してゐるかどうかを確認するためです。

 私は答へました。「はい、顎のプレートを外す手術と、腰骨を採って歯茎に移植する手術です」。

 看護婦さんたちが「えっ?」と驚きの顔をしました。
 ざわざわし始めました。

 「寳德さん、こちらのベッドに寝てください」

 素直に從ひましたが、なぜ、こんなにざわざわしてゐるのだらう。と思ひました。

 なんと、腰骨移植の私の手術承諾書が手術室に届いてゐなかったのです!!!!

 手術承諾書がないと醫師は手術が出來ません。看護婦も、その手術準備が出來ません。これは笑つて済まされることではありません。

 醫師が、急いで手術承諾書を書いて、私の了承を得に入りました。

「今から説明をしますので、承諾をいただけますか?」

私「すみません。私はすべて承諾書を病院側に渡しました。その前に一言申し上げていいですか?手術と云ふのは、受けるだけでとても不安になるものです。それが、昨日の、入院手續きを受け付けてもらふまで40分待たされたこと、9階と8階をたらいまわしにされたこと、點滴の針を刺す場所のミス・・・・、かういふことが續くと、それでなくても不安な手術に對して『こんなに單純ミスが續いて、この手術は大丈夫なのだらうか。もしかしたら失敗するのではないだらうか。』と思つてしまふんです。

 それでも、手術を受ける時は心を整へて受けようと、自分の心の中を落ち着かせるのに必死でした。

 手術に來てまたこれですか?私は昨日の午前中に8階の看護婦さんに、入院・手術關係の書類はクリアケースに入れてすべて渡しました。それでも途中紛失したなら、昨日の午前中から今日の15時半までの間に言っていただければ、すべて控えを取ってあるのでお渡し出來ました。今、病室に來てゐる、妻に持たせた青い手提げバッグの中の黄色いクリアファイルの中にすべて控えがありますから、妻に言つて、もらってください。」

 一同ホッとした顔です。續けました。

「大變、失礼しました。私の命とこれからの生活を救ってくださろうとしてゐる皆様にひどいことを言ってしまひました。どうかみなさん、手術をお願いします」

 ここで素晴らしいのが看護婦です(本来は醫師がマネジメントすべきこと)。

「そんなことはないですよ。寳德さんには落ち度がないのは當たりまえです。本當に申し訳ございません。私たちは必ずよい手術をします」と。こんなときには、看護婦さんの笑顔が最も大切です。

 その後、私は、全軆麻酔で寢てしまひました。あとからかみさんに聞いたら、みんなが駆け込んできて大變だったとか。かみさんも同じことを言ったさうです(笑)。

 この病院は技術は最高です。特に、形成外科と口腔外科の技術は。形成外科など、あの事故の時に破壊された私のひどい顔をこんなにきれいに治してくださいました(前よりいい(笑))。今囘も形成外科と口腔外科です。

 病院に共通して云へるのは、まず、今囘のやうな多科と共同で仕事をするときに、プロジェクトリーダーが不在なことです。マネジメントもそれぞれの科が行う。

 普段もさうです。普段はここに、薬剤師、檢査技師などが加はります。餘計亂れます。

 コミュニケーションの標準化が出來てゐないから、横展開ができないのです。それぞれの國家資格者のプライドも邪魔をします(特に醫師)。これを醫療關係者に云ふと、「規模の大きさ」「縦割り社會」を言ひ譯にします。では、トヨタは? あの巨大企業が、標準化と横展開によって、どの國で造ろうが同じ自動車を造ってゐます(これは大いなる私の研究テーマです。中小企業こそ、俺が俺がの親分社員が幅を利かせてこれが出來てゐません)。

 これを自分の軆を以て體驗させるためにも、天は、交通事故に遭はせたのでせう。神樣ちよつと、周りくどいぜ(笑)。

すべて必然です(落ちになった(笑))?

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このページは、宝徳 健が2018年8月13日 19:35に書いたブログ記事です。

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