中小M&Aガイドライン(第三版)遵守の宣言について

 本ガイドラインは、2つの章から構成される。 第1章(後継者不在の中小企業向けの手引き)は、後継者不在の中小企業にとっ て、M&A を検討するための手引きとなる指針である。後継者不在の中小企業の経営者は、第1章を参照されたい。ただし、ここに記載してある内容はいずれも目安であり、 実際に M&A を進める際には、個別具体的な事情を踏まえて、支援機関との相談の上で判断されたい。 第2章(支援機関向けの基本事項)は、中小企業が M&A を検討・実行する際のサポートを行う支援機関にとって、基本的な事項を記載した指針となる部分である。支援機関は、第1章に併せて第2章も参照されたい。 末尾には、各種の参考資料および用語集を添付している。後継者不在の中小企業宜、参考資料を参照されたい。

目次 ◆ はじめに (第3版)
◆ はじめに (第2版)
◆ はじめに (初版)目次 
◆ 本ガイドラインの構成等 
◆用語集  

第1章 後継者不在の中小企業向けの手引き
I 後継者不在の中小企業にとっての本ガイドラインの意義等

2 中小 M&A の事例
(1) 小規模企業・個人事業主において中小 M&A が成立した事例 
(2) 経営状況が良好でない中小企業において中小 M&A が成立した事例
(3) 親族内承継の頓挫から中小 M&A に移行し成立した事例 
(4) 意思決定のタイミングが中小 M&A の成立内容に影響を与えた事例
(5) 譲り渡し側の条件の明確化が中小 M&A の成立に寄与した事例 
(6) 従業員の反対にもかかわらず中小 M&A が成立した事例 
(7) 廃業を予定していたものの中小 M&A が成立した事例 
(8) 何らかの理由により中小 M&A が成立しなかった事例 



3 譲り渡し側にとっての基本姿勢 
(1) 中小 M&A に関する基本的な認識の変化 
(2) 従業員・取引先等への影響の緩和 
(3) 譲り受け側から見た、譲り渡し側の事業の魅力

4 譲り渡し側にとっての留意点 
(1) 早期判断の重要性
(2) 秘密保持の徹底
(3) 中小 M&A 手続進行上の留意点

II 中小 M&A の進め方
1 中小 M&A フロー図 

2 中小 M&A に向けた事前準備
(1) 支援機関への相談
(2) 後継者不在であることの確認
(3) 引退後のビジョンや希望条件の検討
(4) 中小 M&A に先立つ「見える化」「磨き上げ」(株式・事業用資産等の整理・集約) 
① 株式の整理・集約 

② 事業用資産等の整理・集約


中小 M&A における一般的な手続の流れ(フロー)

(1) 意思決定 

(2)-1 仲介者・FA を選定する場合

① 仲介者・FA の選定及び仲介契約・FA 契約の締結

ア 仲介者・FA の選定等

イ 仲介契約・FA 契約の締結

② 仲介者・FA の比較

③ セカンド・オピニオン/他の支援機関への相談の利点・留意点

(2)-2 仲介者・FA を選定せず、工程の多くの部分を自ら行う場合 

(3) バリュエーション(企業価値評価・事業価値評価)

(4) 譲り受け側の選定(マッチング)

① マッチング支援の流れ

② マッチング支援を単独の支援機関に依頼する場合と複数の支援機関に頼する場合の比較 

③ 譲り受け側候補先の紹介が受けられない場合の対応

(5) 交渉

(6) 基本合意の締結

(7) デュー・ディリジェンス(DD)

(8) 最終契約の交渉・締結

① 譲り渡し側の経営者保証の扱い 

ア M&A を進める前の譲り渡し側の信用力・ガバナンスによる解除 

イ 譲り受け側の信用力・ガバナンスを踏まえた解除又は譲り受け側への行

② デュー・ディリジェンス(DD)の非実施

③ 表明保証の内容 

④ クロージング後の支払・手続

ア 譲渡対価のクロージング後分割払い

イ 役員退職慰労金のクロージング後払い

ウ 株式のクロージング後段階的取得

⑤ 最終契約後の状況に応じた支払の変動 

ア アーンアウト条項

イ 株価調整条項

ウ 支払金の返還に関する条項

⑥ 譲り渡し側経営者に関連する資産・負債等の最終契約後整理

⑦ 最終契約からクロージングまでの期間 

(9) クロージング

(10) クロージング後(ポスト M&A)


III M&A プラットフォーム

M&A プラットフォームの基本的な特徴


M&A プラットフォーム利用の際の留意点

(1) 情報の取扱い

(2) 利用する M&A プラットフォームの選択 


M&A プラットフォームの手数料

(1) 料金体系

(2) 具体例


IV 事業承継・引継ぎ支援センター

事業者同士の中小 M&A の支援 

(1) 支援フロー

① 初期相談対応(一次対応)

② 登録機関等による M&A 支援(二次対応) 

③ センターによる M&A 支援(三次対応) 

(2) センターの構築するデータベース 


その他の支援 

(1) 後継者人材バンク 

(2) 経営資源の引継ぎ


V 仲介者・FA の手数料についての考え方の整理 

手数料の種類

(1) 着手金 

(2) 月額報酬 

(3) 中間金 

(4) 成功報酬 

① 譲渡額(譲受額) 

② 移動総資産額 

③ 純資産額 


レーマン方式及び最低手数料 


具体例 


仲介契約・FA 契約前の手数料に係る確認・対応 

(1) 仲介契約・FA 契約前の手数料と提供する業務内容に係る確認 

① 手数料に関する事項について 

② (仲介契約の場合)相手方の手数料に関する事項について 

③ 提供される業務に関する事項について 

ア 必要となる仲介・FA 業務 

イ マッチングの難易度 

ウ 提供される業務の質 

(2) 業務内容を踏まえた手数料の妥当性について判断又は納得ができない合の対応 



用語集

本ガイドラインで用いられる主な用語について、以下のとおり解説する。

1.M&A 関連用語

○M&A

M&A とは、「Mergers(合併) and Acquisitions(買収)」の略称であるが、我が国では、

広く、会社法の定める組織再編(合併や会社分割)に加え、株式譲渡や事業譲渡を

含む、各種手法による事業の引継ぎ(譲り渡し・譲り受け)をいう。

M&A の主な手法については、参考資料1「中小 M&A の主な手法と特徴」を参照さ

れたい。

○中小 M&A

中小 M&A とは、後継者不在の中小企業(以下「譲り渡し側」という。)の事業を、

M&A の手法により、社外の第三者である後継者(以下「譲り受け側」といい、本ガイド

ラインでは譲り受け側の候補者も含むことがある。)が引き継ぐ場合をいう。

したがって、本ガイドラインにおいて、中小企業の経営者の親族による事業承継

(以下「親族内承継」という。)及び従業員承継は、中小 M&A に含めないものとする。

なお、会社について記載する場合、持分会社等の形態もあり得るものの、本ガイド

ラインでは、代表的な会社形態である株式会社を念頭に記載する。その際には、譲り

渡し側が金融商品取引法第2条第16項に規定する金融商品取引所に上場されてい

る株式(いわゆる上場株式)又は同法第67条の11第1項に規定する店頭売買有価

証券登録原簿に登録されている株式(いわゆる店頭登録株式)を発行している株式

会社に該当しない場合を前提とする。

○マッチング

マッチングとは、譲り渡し側と譲り受け側が M&A の当事者となり得る者として接触

することをいう。譲り渡し側と譲り受け側の交渉は、マッチング後に開始することにな

る。

○支援機関

支援機関とは、中小 M&A を支援する機関である。具体的には、M&A 専門業者、金機関、商工団体、士業等専門家、M&A プラットフォーマーのほか、事業承継・引継支援センター等の公的機関等をいう。M&A 専門業者は、譲り渡し側・譲り受け側に対するマッチング支援や、中小 M&Aの手続進行に関する総合的な支援(以下「マッチング支援等」という。)を専門に行う。民間業者であり、主に仲介者・FA(フィナンシャル・アドバイザー)に分類される(なお、後述のとおり、金融機関、士業等専門家や M&A プラットフォーマーがこれらと同様の業務を行うこともある。)。金融機関には、与信(融資)業務等に加え、主に顧客に対してマッチング支援等を行う者もいる。商工団体(商工会議所、商工会、中小企業団体中央会、商店街振興組合連合会)は、中小企業の経営全般に関する地域の身近な相談窓口として中小企業支援を行なっている。 士業等専門家、M&A プラットフォーマー及び事業承継・引継ぎ支援センターについては後述する。


○士業等専門家

士業等専門家とは、公認会計士、税理士、中小企業診断士、弁護士等の資格を有する専門家をいう。

これら士業等専門家の中には本来業務のほか、マッチング支援等を行う者もいる。


○仲介者/仲介契約

仲介者とは、譲り渡し側(※)・譲り受け側の双方との契約に基づいてマッチング支等を行う支援機関をいい、一部の M&A 専門業者がこれに該当する(業務範囲は個人の支援機関ごとに異なる。)。なお、金融機関、士業等専門家や M&A プラットフォーマーにおいても仲介者と同様の業務を行う場合は、業務の性質・内容が共通する限りにおいて、仲介者として本ガイドラインの適用があるものとする。

仲介契約とは、仲介者が譲り渡し側(※)・譲り受け側双方との間で結ぶ契約をい

い、これに基づく業務を仲介業務という。

※株式譲渡を前提に、株主である経営者等が当事者となる場合もある。

○FA(フィナンシャル・アドバイザー)/FA 契約

FA(フィナンシャル・アドバイザー)とは、譲り渡し側(※)又は譲り受け側の一方と契約に基づいてマッチング支援等を行う支援機関をいい、一部の M&A 専門業者がれに該当する(業務範囲は個別の支援機関ごとに異なる。)。なお、金融機関、士業等専門家や M&A プラットフォーマーにおいても FA と同様の業務を行う場合は、業務の性質・内容が共通する限りにおいて、FA として本ガイドラインの適用があるものとする。FA 契約とは、FA が譲り渡し側(※)・譲り受け側の一方との間で結ぶ契約をいい、

これに基づく業務を FA 業務という。

なお、海外においては、主に大規模な M&A に関して、高度な助言業務等を提供する FA に限定して FA(Financial Adviser)と称することがあるが、我が国においては、中小 M&A に関しても、譲り渡し側・譲り受け側の一方との契約に基づいてマッチング支援等を行う支援機関を FA と称することが一般的であるため、本ガイドラインでは、この解釈に従うものとする。


※株式譲渡を前提に、株主である経営者等が当事者となる場合もある。


〇M&A プラットフォーム/M&A プラットフォーマー

M&A プラットフォームとは、インターネット上のシステムを活用し、オンラインで譲り渡し側・譲り受け側のマッチングの場を提供するウェブサイトをいう。

M&A プラットフォーマーとは、M&A プラットフォームを運営する支援機関をいう(利用対象者や提供されるサービスの内容は、各 M&A プラットフォーマーにおいて異なることがある。


〇M&A 支援機関登録制度 (https://ma-shienkikan.go.jp/)

M&A 支援機関登録制度(本説明箇所において「登録制度」という。)とは、中小企業が安心して M&A に取り組める基盤を構築するために令和3年8月に創設された国の制度であり、本ガイドラインの遵守を宣言する等した仲介業務又は FA 業務を行う者が登録を受けることができる。登録制度に登録していなくとも、仲介業務や FA 業務を行うことは可能であるが、令和5年9月現在、事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)において、M&A 支援機関の活用に係る費用(仲介又は FA の手数料)の補助については、予め登録制度に登録を受けた支援機関の提供する支援に係るもののみを補助対象としている。登録制度等を通じ、仲介業務や FA 業務を行う支援機関に対し、本ガイドラインの普及と理解を促している。


○セカンド・オピニオン / 他の支援機関への相談

セカンド・オピニオン(「他の支援機関への相談」ともいう。)とは、中小 M&A を行おうとしている者が支援機関と契約を締結する際や、支援機関から受けた助言の内容の妥当性を検証したい場合等に求める他の支援機関による意見や助言をいう。当ガイドラインにおいては、支援を受けようとする、又は既に支援を受けている元の支援機関と同様の業務を提供する者による意見や助言を「狭義のセカンド・オピニオン」といい、元の支援機関と異なる業務を提供する者、特に士業等専門家(公認会計士、税理士、弁護士等)や事業承継・引継ぎ支援センターによる意見や助言を「広義のセカンド・オピニオン」といい、これらはいずれもセカンド・オピニオンに含むものとする。

例えば、元の支援機関である仲介者から受けた助言について他の仲介者の意見を求めることは、狭義のセカンド・オピニオンに該当し、他方、仲介契約や M&A における最終契約を締結しようとする際に、契約内容の妥当性や合意した内容が適切に契約書に反映されているかについて弁護士に意見を求めることは、広義のセカンド・オピニオンに該当する。


○ノンネーム・シート(ティーザー)

ノンネーム・シート(ティーザー)とは、譲り渡し側が特定されないよう企業概要を簡単に要約した企業情報をいう。譲り受け側に対して関心の有無を打診するために使用される。


○ロングリスト/ショートリスト

ロングリストとは、基本的には、譲り渡し側がノンネーム・シート(ティーザー)の送付先を選定するにあたり、譲り受け側となり得る候補先(数十社程度となることが多い。)についての基礎情報をまとめた一覧表をいう。ショートリストとは、基本的には、ノンネーム・シート(ティーザー)を送付して関心を示した譲り受け側の候補先の中から、具体的に検討可能な候補先(数社程度となることが多い。)を絞り込んだ一覧表をいう。

なお、譲り渡し側に関する情報の拡散を可能な限り防止する観点から、仲介者・FAがロングリストの内容を譲り渡し側と協議しながら精査し、候補先を数社程度に絞り込んでショートリストとした後、ショートリスト記載の候補先にのみノンネーム・シート(ティーザー)を送付するケースもある。


○秘密保持契約(NDA、CA)

秘密保持契約とは、秘密保持を確約する趣旨で締結する契約をいう。具体的には、譲り受け側が、ノンネーム・シート(ティーザー)を参照して譲り渡し側に関心を抱いたりた場合に、より詳細な情報を入手するために譲り渡し側との間で締結するケースや、譲り渡し側や譲り受け側が仲介者・FA との間で締結するケース(仲介契約・FA約の中で秘密保持条項として含められるケースが多い。)がある。「NDA(Non-Disclosure Agreement)」や「CA(Confidential Agreement)」ともいう。


○企業概要書(IM、IP)

企業概要書とは、譲り渡し側が、秘密保持契約を締結した後に、譲り受け側に対して提示する、譲り渡し側についての具体的な情報(実名や事業・財務に関する一般的な情報)が記載された資料をいう。仲介者・FA が譲り渡し側から提供された情報を元に作成することが多い。インフォメーション・メモラン

Memorandum)」やインフォメーション・パッケージ「IP(Information Package)」ともいう。



○意向表明書

意向表明書とは、譲り渡し側が譲り受けの際の希望条件等を表明するために提出する書面をいう。基本的には法的拘束力を持たないことが多い。企業概要書に記載された情報等を踏まえて暫定的な希望条件等を記載し、後述のデュー・ディリジェンス(DD)に進む意向を表明する書面を第一次意向表明書、デュー・ディリジェンス(DD)の結果を踏まえて最終的な希望条件等を記載し、譲り受けを希望する意向を明確に表明する書面を第二次意向表明書(最終意向表明書)等と称することがある。

例えば、債務超過企業において譲り受け側(スポンサー)を選定する場合に、その過程の透明性・公正性を確保するため入札手続を実施するケース等において、意向性明書が用いられることがある。

なお、譲り受け側からの意向表明書に対する応諾書を、譲り渡し側が提出することにより、後述の基本合意とほぼ同様の合意を締結したものとして扱うこともある。


○基本合意書(LOI、MOU)

基本合意書とは、譲り渡し側が、特定の譲り受け側に絞って M&A に関する交渉を行うことを決定した場合に、その時点における譲り渡し側・譲り受け側の了解事項を確認する目的で記載した書面をいう。

Of Understanding)」ともいう。基本的に法的拘束力がないものの、譲り受け側の独占的交渉権や秘密保持義務等については、法的拘束力を認めることが通常である。


○デュー・ディリジェンス(DD)

デュー・ディリジェンス(Due Diligence)とは、対象企業である譲り渡し側における各種のリスク等を精査するため、主に譲り受け側が FAや士業等専門家に依頼して実施する調査をいう(「DD」と略することが多い。)。調査項目は、M&A の規模や実施希望者の意向等により異なるが、一般的に、資産・負債等に関する財務調査(財務 DD)や株式・契約内容等に関する法務調査(法務 DD)等から構成される。

なお、その他にも、ビジネスモデル等に関するビジネス(事業)DD、税務 DD(財務 DD等に一部含まれることがある。)、人事労務 DD(法務 DD 等に一部含まれることがある。)、知的財産(知財)DD、環境 DD、不動産 DD、ITDDといった多様な DDが存在する。


○クロージング

クロージングとは、M&A における最終契約の決済のことをいい、株式譲渡、事業譲等に係る最終契約を締結した後、株式・財産の譲渡や譲渡代金(譲渡対価)の全部又は一部の支払を行う工程をいう。


○PMI

PMI(Post-Merger Integration)とは、クロージング後の一定期間内に行う経営統合作業をいう。


○中小 PMI ガイドライン

(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/pmi_guideline.pdf)中小 PMI ガイドラインとは、M&A 成立前の取組(プレ PMI)等を含めた PMI プロセス全般における中小企業の PMI の「型」を示すものとして、中小企業庁により令和4年3月に策定・公表されたガイドラインである。会社の規模等に応じて PMI の取組を「基礎編」と「発展編」に分けて紹介するほか、PMI に関する成功・失敗事例も盛り込んでいる。中小 PMI ガイドラインを動画で解説する「中小 PMI ガイドライン講座」

(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2023/230329shoukei.html)

も公表されている。



○PMI 実践ツール

(https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240329007/20240329007.html)

PMI 実践ツールとは、中小 PMI ガイドラインの標準的なステップ・取組等を踏まえてPMI に取り組むためのツールとして、中小企業庁により令和6年3月に策定されたものである。(1)PMI 分析ワークシート、(2)PMI アクションプラン、(3)統合方針書の 3 つのツールが公表されており、これらの活用方法を解説した「PMI 実践ツール活用ガイドブック」も公表されている。


○バリュエーション(企業価値評価・事業価値評価)

バリュエーションとは、企業又は事業の価値を定量的に評価することをいう。評価額は、中小 M&A で譲渡額を決める際の目安の一つとして取り扱われる。評価手法は様々なものがあり、企業の実態や事業の特性等に応じた手法が選択される。バリュエーションの手法については、参考資料2「中小 M&A の譲渡額の算定方法」を参照されたい。


○チェンジ・オブ・コントロール(COC)条項

チェンジ・オブ・コントロール条項とは、ある企業が締結している契約(例えば、賃貸契契約、取引基本契約、フランチャイズ契約等)について、当該企業の株主の異動や支配権の変動等により当該契約の相手方当事者に解除権が発生すること等を定める条項をいう。COC(Change Of Control)条項ともいう。


○表明保証条項

表明保証条項とは、契約の一方当事者が、他方当事者に対し一定の時点(一般的には最終契約締結時・クロージング時の両時点)において、当該契約に関する事項について、当該事項が真実かつ正確であることを表明し、かつその内容を保証する条項をいう(同条項違反に基づく損害賠償・契約の解除といった補償等についての規定も設けられることが通常である。)。特に、譲り渡し側(又はその経営者等)が一定の事項について表明保証していたにもかかわらずこれに違反した場合に、譲り受け側に生じた損害について補償等を行うこと等により、契約当事者間における潜在的なリスクの分担を図る機能を有している。例えば、従業員との間の労働紛争が存在しないことを表明保証していたにもかかわらず実際には紛争が生じており、中小 M&A 実行後に和解が成立した場合、従業員に支払う和解金相当額を譲り渡し側(又はその経営者等)が負担するケース等が想定される。


○表明保証保険

表明保証保険(M&A 保険と呼ばれることもある。)とは、譲り渡し側が、自ら又は譲り渡し側の対象会社に関し一定の事項について、真実・正確であることを表明保証していたにもかかわらず表明保証違反があった場合に、それにより譲り渡し側(売主用の表明保証保険の場合)又は譲り受け側(買主用の表明保証保険の場合)が被る損害を填補する保険をいう。表明保証保険の購入により、表明保証違反に関するリスクを保険会社に引き受けさせることができるため、株式譲渡契約等における表明保証や補償の範囲に関する譲り渡し側・譲り受け側間の交渉が円滑化する場合もある。日本国内でも一部の損害保険会社により提供が開始されている。表明保証保険を購入する場合、一般的にはデュー・ディリジェンス(DD)の結果を報告した DD レポート等を保険会社に提出し、引受審査を経る必要がある。


○債務超過企業

債務超過企業とは、本ガイドラインでは、譲り渡し側が債務超過状態の場合における当該譲り渡し側をいう。債務超過企業であっても中小 M&A を実行できる可能性はあるが、その際には債務整理手続等を伴うことがある。なお、本ガイドラインでは、債務超過企業における「債務超過」とは、特に説明のな

い限り、貸借対照表の簿価上の債務超過ではなく、資産・負債の時価評価を踏まえた実態貸借対照表上の債務超過を意味するものとする。


○経営者保証に関するガイドライン

「経営者保証に関するガイドライン」とは、中小企業の経営者による個人保証(以下「経営者保証」という。)に関する契約時及び履行時等における中小企業、経営者及び金融機関による対応についての、中小企業団体及び金融機関団体共通の自主的自律的な準則として、「経営者保証に関するガイドライン研究会」により、平成25年12月に策定・公表され、平成26年2月1日より適用されているガイドラインをいう(以下「経営者保証に関するガイドライン」という。)。また、これを補完するものとして、事業承継時に先代経営者及び後継者の双方から二重に保証を求めること(二重徴求)を原則として禁止する、「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」(以下「経営者保証に関するガイドラインの特則」という。)が、「経営者保証に関するガイドライン研究会」により、令和元

年12月に策定・公表され、令和2年4月1日より適用された。さらに、中小企業の廃業時に焦点を当て、中小企業の経営規律の確保に配慮しつつ、経営者保証に関するガイドラインの趣旨を明確化する、「廃業時における『経営者保証に関するガイドライン』の基本的考え方」(以下「基本的考え方」という。)が、「経営者保証に関するガイドライン研究会」により、令和4年3月に策定・公表された。基本的考え方により経営者保証ガイドラインの理解が促進され、債務者が廃業したとしても、保証人は破産手続を回避し得ることが周知されることで、経営者が早期に経営改善、事業再生及び廃業を決断し、主たる債務者の事業再生等の実効性の向上や、保証人の新たなスタートの早期着手につながることが期待される。



2.事業承継・引継ぎ支援センター関連用語

○事業承継・引継ぎ支援センター

事業承継・引継ぎ支援センターとは、中小 M&A 及び従業員承継(以下「用語集」においてこれらを「事業引継ぎ」と総称する。)や親族内承継を含む中小企業の事業承継続に関する相談に幅広く対応する国が設置する公的相談窓口であり、令和3年4月、主に事業引継ぎを支援していた「事業引継ぎ支援センター」と主に親族内承継を支援していた「事業承継ネットワーク」の機能を統合し、事業承継支援のワンストップ支援を行う「事業承継・引継ぎ支援センター」へと発展的に改組された。事業承継・引継ぎ支援センターは、令和6年8月現在、全国47都道府県48か所(東京都のみ、千代田区と立川市の2か所)に設置されている。各事業承継・引継ぎ支援センターの連絡先については、参考資料3「事業承継・引継ぎ支援センター連絡先一覧」を参照されたい。


○登録機関等(登録民間支援機関/マッチングコーディネーター)及び連携 M&A プ

ラットフォーマー

登録民間支援機関とは、各事業承継・引継ぎ支援センターに登録された仲介者・FA(主に、M&A 専門業者又は金融機関)をいう。マッチングコーディネーターとは、各業業承継・引継ぎ支援センターに登

地域の士業等専門家をいい、より小規模な事業者の中小 M&A 支援を目的とする。


以下では、登録民間支援機関及びマッチングコーディネーターを併せて「登録機関等」と総称する。連携 M&A プラットフォーマーとは、中小企業庁と連携し、各事業承継・引継ぎ支援センターに登録された仲介業務又は FA 業務を提供する M&A プラットフォーマーをいう。登録機関等及び連携 M&A プラットフォーマーは、事業承継・引継ぎ支援センターからの依頼を受け、利用者と仲介契約・FA 契約等を結び、M&A 支援を行う。


○外部専門家

外部専門家とは、事業承継・引継ぎ支援センターから事業引継ぎ業務を依頼された士業等専門家をいう。


○「後継者人材バンク」事業

「後継者人材バンク」事業とは、事業承継・引継ぎ支援センターが実施する後継者不在の小規模事業者(主として個人事業主)と創業希望者(事業を営んでいない個人)とのマッチング支援等を行う事業をいう。





はじめに (第3版)

「中小 M&A ガイドライン(第2版)-第三者への円滑な事業引継ぎに向けて-」(令和5年9月、中小 M&A ガイドライン見直し検討小委員会。以下「第2版」という。)の策定後、約1年が経過した。

第2版においては、中小 M&A の市場が急速に拡大し、マッチング支援や M&A の手続進行に関する総合的な支援を専門に行う M&A 専門業者が顕著に増加する中で、特に M&A 専門業者に関して、その契約内容や手数料のわかりにくさ、担当者によっては支援の質が十分と言えない場合があるといった声が聞かれるようになったことを踏まえて、必要な改訂を行った。今回の改訂では、提供する業務の内容・質とその対価となる手数料の額(相手方の手数料を含む。)について、中小企業向けに確認すべき事項を解説するとともに、仲介者・FA に対して求められる説明について追記している。また、第2版改訂時と同様に M&A 専門業者の支援の質を確保する観点から、仲介者・FA が実施する営業・広告に係る規律の明記や仲介者において禁止される利益相反事項の具体化を図っている。さらに、譲り渡し側・譲り受け側の当事者間において、最終契約に定めた事項の不行等のトラブルも発生している。特に、譲り渡し側の経営者保証の扱いについては、譲渡しり渡し側の経営者保証を譲り受け側に移行させる想定であったにもかかわらず移行しない等の行為を行う譲り受け側の存在も指摘されている。これらを踏まえ、最終契約(株式譲渡契約等)において当事者間でトラブルに発展する可能性があるリスク、その対応策について解説するとともに、仲介者・FA に対して求める対応について追記している。加えて、最終契約の不履行を意図的に生じさせるような不適切な譲り受け側を市場から排除するために、仲介者・FA に求められる対応についても追記している。


はじめに (第2版)

「中小 M&A ガイドライン-第三者への円滑な事業引継ぎに向けて-」(令和2年3月、「事業引継ぎガイドライン」改訂検討会。以下「初版」という。)の策定後、約3年が経過した。この間、M&A が中小企業における事業承継の手法の1つであることは、ますます広く認識されるに至った。他方で、依然として、中小企業における高齢の経営者や後後者未定の割合は高く、廃業による経営資源の散逸や地域経済への悪影響等を防ぐために、M&A を促進する必要性は高い。また、初版策定後、令和3年4月に「中小 M&A 推進計画」が策定され、同年8月には、同計画に基づき、「M&A 支援機関登録制度」が創設された。「M&A 支援機関登録制度」においては、登録を希望する M&A 支援機関に対して中小 M&A ガイドラインの遵守宣言を求めており、当該登録制度等を通じて、M&A 専門業者をはじめとした支援機関に対し、中小 M&A ガイドラインに記載された行動指針の普及・定着を図ってきたところである。しかし、後継者不在の中小企業もその対象に含む中小M&Aの市場が急速に拡大し、マッチング支援やM&Aの手続進行に関する総合的な支援を専門に行うM&A専門業者(主に仲介者・FA)が顕著に増加する中で、特にM&A専門業者に関して、その契約内容や手数料のわかりにくさ、担当者によっては支援の質が十分と言えない場合があるといった声が聞かれるようになった。このような中小企業のM&Aを取り巻く課題について、「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会」(第8回、令和5年3月16日開催)において課題への対応の方向性が確認された。上記検討会における議論を踏まえ、今回、中小M&Aガイドラインについて、主に以下の改訂を行った。

M&A専門業者の手数料に関し、実務上多く用いられる算定方式(レーマン方式)について依頼者である中小企業において留意すべき点を明記し、また、設定されることが多い最低手数料について、その金額の分布状況や適用事例を紹介。

支援の質の確保・向上に関し、M&A専門業者には、依頼者との間の契約上の義務を履行し、職業倫理を遵守することが求められる旨を明記。そのためには知識・能力の向上、適正な業務遂行を図ることが重要であり、個々のM&A専門業者や業界に求められる取組を紹介。

仲介契約・FA契約に関し、M&A専門業者は、契約締結前に契約に係る重要な事項を記載した書面を交付(電磁的方法による提供も可)して、明確な説明することを明記。また、説明すべき重要な事項を見直すとともに、説明を受ける相手方、説明者、説明後の重要な検討時間の確保等も明記。

直接交渉の制限に関する条項の留意点(制限される候補先、交渉及び期間)について明記。

その他、M&A専門業者に依頼する場合の留意点(セカンド・オピニオン、マッチングにおける支援機関の活用、直接交渉の制限)の追加。

以上に加えて、行政・民間における取組の推進状況の反映等を行い、今般、中小M&Aガイドライン(第2版)(以下「本ガイドライン」という。)として公表する。中小企業のM&Aに対する適切な支援を実現するために、特に支援機関においては、本ガイドラインンの考え方に準拠した対応を行うことを期待する。上


はじめに (初版)

日本全体において、令和7年(2025年)までに、平均引退年齢である70歳を超える中小企業・小規模事業者(以下「中小企業」という。)の経営者は約245万人、うち約半数の約127万人が後継者未定と見込まれている。後継者不在の中小企業は、将来の見通しが立っていないにもかかわらず、何らの対策も講じない場合には、廃業せざるを得ない。この場合には、従業員の雇用が失われたり、取引の断絶によりサプライチェーンに支障が生じたりするなど、多くの関係者の混乱を招き、ひいては地域経済にも悪影響を生じさせるおそれがある。また、廃業による経営資源の散逸が積み重なることにより、優良な経営資源が活用されないまま喪失されてしまうことは、日本経済の発展にとっても大きな損失となり得るる。このような中、後継者不在の中小企業の事業を M&A により社外の第三者が引き継ぐケースは、「事業引継ぎガイドライン」(平成27年3月、中小企業向け事業引継ぎ検討会。以下「旧ガイドライン」という。)策定から約5年が経過する中で増加してきており、M&A も、中小企業にとって事業承継の手法の1つとの認識が広がり始めている。しかしながら、中小企業全体で見れば、いまだ M&A により社外の第三者が事業を引き継ぐことに抵抗感がある経営者は多く、また、実際に進めようと思っても、M&A に対する知見、経験もない場合も多いことから、結果として M&A により社外の第三者に

よる引継ぎをせずに廃業に至ってしまうケースも多いと考えられる。また、近年、事業引継ぎ支援センター等の公的機関の充実や、中小企業を対象とした M&A の仲介等を務める民間の M&A 専門業者の増加により、中小企業の M&Aに関する環境整備も図られつつあるが、今後更なる増加が見込まれる中小企業のM&A が円滑に促進されるためには、より一層、公的機関、民間の M&A 専門業者、金融機関、商工団体、士業等専門家等の関係者による適切な対応が重要である。以上のことから、M&A に関する意識、知識、経験がない後継者不在の中小企業の軽営者の背中を押し、M&A を適切な形で進めるための手引きを示すとともに、これを支援する関係者が、それぞれの特色・能力に応じて中小企業の M&A を適切にサポートするための基本的な事項を併せて示すため、旧ガイドラインを全面的に改訂することとする。


なお、本ガイドラインでは、基本的に社外の第三者による事業の引継ぎを念頭に置いており、自社の役員又は従業員による承継(以下「従業員承継」という。)を直接の対象としていないものの、共通する部分においては、本ガイドラインの考え方に準拠した対応を期待する。また、M&A に関する指針として、「公正な M&A の在り方に関する指針-企業価値の向上と株主利益の確保に向けて-」(令和元年6月28日、経済産業省)があるが、これは「企業価値の向上及び公正な手続確保のための経営者による企業買収(MBO)に関する指針」(平成19年9月4日、経済産業省)を改訂したものであり、後継者不在の中小企業の M&A を対象とする本ガイドラインとは異なる趣旨により策定された指針であるため、留意されたい。          以上

⭐️中小M&Aガイドライン(第三版)遵守の宣言について

株式会社経営戦略室は、国が創設したM&A支援機関登録制度の登録を受けている支援機関であり、中小企業庁が定めた「中小M&Aガイドライン(第三版)」(令和6年8月30日)を遵守していることを、ここに宣言いたします。

(株式会社経営戦略室)は、中小M&Aガイドライン(第三版)を遵守し、下記の取組・対応を実施しております。

 

第1章:後継者不在の中小企業向けの手引き

I  後継者不在の中小企業にとっての本ガイドラインの意義等

1 後継者不在の中小企業にとっての本ガイドラインの意義 

 親族内から選定し、仮に親族内に不在であれば自社の役員や従業員の中から選定しようとすることが多い。しかし、親族内にも社内にも後継者候補がいない、いわゆる 後継者不在の中小企業においては、社外の第三者に後継者候補を求めるほか事業承継の選択肢がなく、それが実現できなければ廃業を余儀なくされることになる。 中小M&A は、このような後継者不在の中小企業が、社外の第三者による事業承継のためにM&A の手法を用いるものであり、大企業を対象とするM&A とは異なる点がある。 例えば、中小M&A において、特に譲り渡し側は、M&A 未経験であることがほとん どであり、M&A に関する経験・知見が乏しい傾向にある。また、中小M&A は、対象と なる事業が中小企業の経営者個人の信用・人柄その他の属人的な要素に大きく影 響される傾向にある。加えて、中小M&A においては、M&A そのものに多額のコスト (特にM&A 専門業者や士業等専門家等の手数料や報酬)を掛けられない傾向にあ る。 このような実情を踏まえ、本章においては、主に後継者不在の中小企業である譲り渡し側の視点から、M&A に関する一般的な説明に留まらず、中小M&A独自の特色についても加味した説明を行うこととする。 これによって、中小M&A を検討する経営者の背中を押し、中小 M&A が適切な形 で促進されることを目指すものとする。


2 中小M&Aの事例

 中小M&Aは事案ごとに特徴があり、事業規模・業績・業態等によっても、一様に類型化することはできない。しかしながら、中小M&Aについて具体的なイメージを持ちやすくするべく、以下では、各種の特徴ごとに、具体的な事例を紹介する(詳細は参考資料4「中小M&A の事例」参照)。 なお、ここに記載する事例は、それぞれ、あくまで一例であり、網羅的なものではな く、個別の具体的な中小 M&A が、ここに記載する事例のとおりの結論になることを確 約するものではないため、留意されたい。 


以上


譲り渡し側にとっての基本姿勢

(1) 中小 M&A に関する基本的な認識の変化

大企業と異なり、多くの中小企業にとって、M&A は馴染みの薄いものであると言わ

れることがある。その背景として、譲り渡し側・譲り受け側ともに、中小 M&A を躊躇す

る原因があるとされる。

例えば、譲り渡し側にとっては、M&A は「後ろめたい」、「従業員に申し訳ない」、ま

た、譲り受け側にとっては、M&A は敵対的買収を行う「ハゲタカ」のようなイメージであ

る等といった感覚があると言われることがあった。特に地方においては、そのような感

覚が更に強まる傾向にあると言われることがあった。

しかし、そのような感覚は、必ずしも時代の趨勢に合致したものではないと思われ

る。中小 M&A は、譲り渡し側経営者がそれまでの努力により築き上げてきた事業の

価値を、社外の第三者である譲り受け側が評価して認めることで初めて実現すること

であり、譲り渡し側経営者にとって後ろめたいことではなく、むしろ誇らしいことである

と言える。また、譲り受け側にとって、他社が時間を掛けて築き上げてきた事業を譲り

受けるということは、経営判断に基づき事業を拡大するための1つの合理的な手法で

あるとともに、通常は、譲り渡し側との信頼関係に基づいて実現するものであり、友好

的な取引であると言える。こういった、中小 M&A に対する従来否定的なイメージが肯

定的に受け入れられる感覚が、中小企業の間にも徐々に浸透してきていると言われ

ている。

また、近年、事業承継・引継ぎ支援センター等の公的機関の整備を含め、中小

M&A に関する支援機関は充実してきていることから、中小企業にとっても、以前より

支援機関へのアクセスが容易になり、支援を受けやすくなってきていると言える。

このように、中小 M&A に関する基本的な認識や中小 M&A を取り巻く環境が近年

大きく変化する中で、譲り渡し側経営者は、積極的に中小 M&A を検討することが望ま

れる。

(2) 従業員・取引先等への影響の緩和

事業を社外の第三者に譲り渡して存続させることにより、従業員の職場を残して雇

用の受皿を守ることができる。また、取引先(仕入先・得意先等)との取引関係を継続

させることができれば、地域におけるサプライチェーンの維持にも資することになる。

特に、地域の中核企業と言われる規模の企業であれば、何らの対策も行わずに廃

業した場合、多くの従業員の雇用が失われ、地域のサプライチェーンにも大きな穴が

生じるおそれがある。

このように、譲り渡し側経営者は、自身の従業員・取引先等への影響を緩和すると

いう観点でも、中小 M&A には意義がある、という点を認識することが望まれる。



譲り渡し側にとっての留意点

(1) 早期判断の重要性

中小 M&A をより早期に検討し実現することにより、従業員の雇用を確保し地域の

サプライチェーンを維持することが可能となり、譲り渡し側経営者自身にとっても手元

に残る代金(譲渡対価)の金額が多くなるケースもある。また、事業全体としては継続

できなくとも、例えば利益計上できている優良店舗の一部事業のみを早期に譲り渡す

こと等で事業の一部を継続させることができるケースもある。

個別のケースにより異なるが、通常、希望する譲り受け側とのマッチングには、数

か月~1年程度の時間を要することが見込まれることから、早期に判断して動き出す

ことが重要である。


特に、中小 M&A についての判断は、日頃の繁忙等に追われることで後ろ倒しにな

りがちであるが、決断が遅れれば遅れるほど中小 M&A の選択肢は狭まる傾向にあ

る。特に業績が良くない場合には、資金繰りが尽きてしまい身動きを取れなくなるケ

ースも見られるので早期の判断が求められる。実際、判断が遅れた結果、廃業費用

すら捻出できない状況に陥るケースもあるので、家族、従業員や取引先等に迷惑を

掛けないためにも、経営者は、早期に判断し、対応を見極めることが重要である。


2) 秘密保持の徹底

中小 M&A に関する手続の全般にわたり、秘密を厳守し情報の漏えいを防ぐことは

極めて重要である。外部はもちろん、親戚や友人、社内の役員・従業員に対しても、

知らせる時期や内容には十分注意する必要がある。中小 M&A の最終契約締結前に、

極秘に親族や幹部役員等のごく一部の関係者にのみ知らせることもあるが、それ以

外の関係者に対しては、原則として可能な限りクロージング後(早くとも最終契約締結

後)に知らせるべきである。取引先や従業員に意図せず情報が伝わってしまったり、

経営者が不用意な一言を発したりしたせいでトラブルとなり、中小 M&A が頓挫してし

まうケースも見受けられる。取引先や従業員に情報が伝わった後に中小 M&A が頓挫

した場合には、取引先の喪失や従業員の退職等、従前の事業活動の継続に支障を

来すような事態が生じるおそれもある。この点には、初期から注意しておく必要がある。

譲り渡し側が自ら譲り受け側を探す場合に、取引先や同一地域内の同業者等に打診

するときにも、同様に注意が必要である。中小 M&A に関する情報を関係者に知らせ

る時期については、まず譲り渡し側・譲り受け側双方において協議されたい。

また、マッチングにおいては、譲り渡し側の情報が譲り受け側候補先に伝わること

となるため、秘密保持の観点から留意が必要である。複数の支援機関に相談して複

数の支援機関がマッチング支援を試みる場合には、譲り渡し側に関する情報が必要

以上に外部に流出するおそれがあり、むしろ譲り渡し側にとってリスクとなり得るため

注意が必要である。例えば、複数の支援機関が、同じ譲り渡し側の情報を同じ譲り受

け側に紹介することにより、情報が出回っているように感じられ、譲り受け側の心証

が害されることがあり得る。そのため、譲り渡し側は、基本的には単独の支援機関に

マッチング支援を依頼することが多い傾向にあるが、マッチング支援を単独の支援機

関に依頼する場合と複数の支援機関に依頼する場合の比較については、それぞれ

の利点や留意点を把握した上で、選択することが望ましく、本章Ⅱ3(4)②「マッチン

グ支援を単独の支援機関に依頼する場合と複数の支援機関に依頼する場合の比較」

を参照されたい。

(3) 中小 M&A 手続進行上の留意点

中小 M&A の手続は、後述の中小 M&A フロー図に記載の各工程を踏まえて進むことが多いが、対象となる譲り渡し側の事業規模が特に小規模な場合には、より簡易な

形で実施することが現実的なケースも多く見られる。本ガイドラインはあくまで中小

M&A の基本的な手続を示すものであり、全ての中小 M&A において厳格に本ガイドラ

インに記載する全ての手続を実施することを要請するものではない。

むしろ、譲り渡し側は、譲り受け側及び支援機関との信頼関係を築いた上で、譲り

受け側の意向に誠実に対応することが中小 M&A の手続の円滑な進行のために必要

であることを理解されたい。


II 中小 M&A の進め方

中小 M&A フロー図

一般的に、中小 M&A は、以下のフロー図の「中小企業の動き」に記載の流れに沿

って進むことが多い。また、同図の各工程においては、「主な支援機関」に記載の支

援機関が中小 M&A の支援を行うことが多い(実際には、個別の事例において、これら以外の支援機関が支援を行うケースもある。)。



中小 M&A に向けた事前準備

譲り渡し側経営者が、中小 M&A を実行すべきかどうかについての意思決定を単独

で行うことは容易なことではない。したがって、まずは早期に身近な支援機関へ相談

した上で、支援機関による助言の下で中小 M&A の事前準備を行うことが望ましい(本

章Ⅱ1「中小 M&A フロー図」参照)。

(1) 支援機関への相談

譲り渡し側経営者が中小 M&A の意思決定を行うに当たっては、様々なポイントを

検討することになる。しかしながら、譲り渡し側経営者が単独で検討していても、日々

の業務への対処等が優先してしまい、なかなか検討が進まないことが多い。また、専

門的な知見を有しない中で検討を続けることで誤った判断を行うおそれもある。

そのため、譲り渡し側経営者がまず行うべきことは、身近な支援機関への相談であ

る。具体的には、商工団体、士業等専門家(公認会計士・税理士・中小企業診断士・

弁護士等)、金融機関、M&A 専門業者のほか、事業承継・引継ぎ支援センターといっ

た公的機関があり、まずはこういった支援機関に相談することが望まれる。

実際には、まず顧問の士業等専門家(特に顧問税理士)に相談することも多いと思

われるが、自身が相談しやすいと考えられれば、所属する商工団体、取引金融機関

等に相談してもよい。公的機関である事業承継・引継ぎ支援センターや、政府系金融

機関である日本政策金融公庫(参考資料5「日本政策金融公庫『事業承継マッチング

支援』」参照)でも相談を受けている。

その際には、まず、直近3年分の税務申告書・決算書(損益計算書・貸借対照表を

含む。)・勘定科目内訳明細書の写しを用意すれば十分である。可能であれば会社

案内や自社ホームページの写し等といった、譲り渡し側の事業の概要が分かる資料

も用意できるとよい。これら以外の詳細な資料は、支援機関からの指示を受けてから

準備すれば足りる。

中小 M&A の意思決定がまだ済んでいないから相談を控えるのではなく、むしろ、

意思決定がまだ済んでいないからこそ相談することが必要である。

なお、支援機関への相談の際には、自分にとってマイナスな情報や後ろめたい情

報ほど先に伝えておく真摯な姿勢が望まれる。これにより支援機関も課題への対応

策や解決方法等を早期に検討しやすくなり、円滑な中小 M&A に資することになる。

(2) 後継者不在であることの確認

譲り渡し側経営者は、親族内・社内に後継者候補がいないこと(つまり後継者が不

在であること)を確認しておく必要がある。具体的には、親族内承継を実施しないこと

につき身近な親族(特に子や兄弟)から了解を得ておくこと、社内に後継者候補がい

ないこと(従業員承継が不可であること)を確認しておくことが必要である。この際、前述のとおり、秘密保持の観点には注意が必要である。

(3) 引退後のビジョンや希望条件の検討

譲り渡し側経営者は、引退後のビジョンを含む希望条件を事前によく考えておく必

要がある。例えば、当面は譲り渡し側・譲り受け側の事業に関わり続けたいのか、別

の事業に進出したいのか、それとも社会貢献活動や余暇を楽しむといった全く別のこ

とを行いたいのか等、引退後にどのような過ごし方を選択するかといった点は、本人

のその後の人生にとって重要な要素である。

また、希望条件についても、代金(譲渡対価)の金額や従業員の雇用継続は、譲り

渡し側経営者として懸念することの多い重要な要素の1つではあるが、希望条件とし

て検討すべき要素はこれに限定されるものではない。

譲り渡し側経営者は、中小 M&A における希望条件を明確化し、可能な限りで優先

順位を付しておくことが望ましい。中小 M&A は相手があることであり、譲り渡し側の希

望が確実に受け入れられるわけではないが、そのような場合に譲歩できない点を固

めておくことは、譲り受け側とどのような点を交渉すべきかを明確化することになり、

円滑な交渉の実現にも資するものである。

(4) 中小 M&A に先立つ「見える化」「磨き上げ」(株式・事業用資産等の整理・集約)

一般的に、事業承継においては、経営状況・経営課題等の現状把握(見える化)と、

事業承継に向けた経営改善等(磨き上げ)が必要とされるが、中小 M&A の実行のた

めには、その中でも最低限、株式・事業用資産等の整理・集約が必要である。以下で

は、この観点より説明する。

ただし、前述のとおり、重要なことはまず支援機関に相談することである。譲り渡し

側経営者だけでは株式・事業用資産等の整理・集約が困難な場合もあるため、まず

は顧問税理士等の身近な支援機関に相談することが望ましい。

なお、株式や事業用資産等の整理・集約については、法的な論点等についての検

討や交渉を要することもあるので、この場合には法務の専門家である弁護士の助言

を得ることが望まれる。

株式の整理・集約

普段は意識する機会が少ないものの、会社にとって株式は非常に重要なものであ

る。仮に、株式が分散していたり、一部株主の所在が不明であったりする場合、中小

M&A を実行する際に重大な障害となるおそれもある。

基本的に、総議決権の過半数の株式があれば株主総会決議は確実に可決するこ

とができるが、特に重要な事項(例えば、全事業の譲渡)については特別決議(出席

株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要な決議)が必要となることがあるため、これを確実に可決できるように総議決権の3分の2以上の株式を保有しておくことが望

ましい。仮に譲り渡し側経営者が譲り受け側に対して会社の全株式を譲渡する場合

(株式譲渡)には、基本的に、譲り渡し側経営者が全株式を保有しておく必要がある。

そのためには、他の株主からの株式の買取り(及びそのための買取資金の調達)が

必要なケースもある。

また、株主名簿が正しく整備されているか、実際に出資していない親族・知人等の

名義になっている株式(いわゆる名義株)がないか、(株券発行会社の場合)株券が

適切に管理されているかといった点も確認が必要である。

事業用資産等の整理・集約

重要な事業用資産等(不動産や機械設備等)について、第三者の名義である、担

保が設定されている、遺産分割の対象として争われている、第三者との間で係争中

の物件である等の場合、譲り渡し後の事業継続に支障が生じ得るため、これらにつ

いても確認が必要である。

また、中小 M&A においては、家族経営の企業が多いことから、譲り渡し側の会社

の財産と経営者個人の財産が明確に分離されていないケースも多い。そのようなケ

ースでは、譲渡する事業用資産等を譲り受け側にスムーズに譲り渡せないこともある

ため、この点も明確に区別して整理・集約しておく必要がある。

中小 M&A における一般的な手続の流れ(フロー)

本章Ⅱ1「中小 M&A フロー図」に記載する各工程について以下、説明する。

(1) 意思決定

前述のとおり、中小 M&A に関する意思決定前の段階から必要に応じて支援機関

に相談しつつ、整理すべき事項を整理した上で、最終的には自ら明確に意思決定す

ることが必要である。その上で、中小 M&A について具体的に手続を進めることになる。

中小 M&A においては、大きく分けて以下の2点が課題となる。

A マッチング以前の段階 :譲り受け側を見つける方法

B マッチング後の段階 :譲り受け側が決まった後の具体的な手続の進め方

この点を踏まえ、以下では、次の2つのパターンに分類して説明する。

(2)-1 仲介者・FA を選定する場合

(2)-2 仲介者・FA を選定せず、工程の多くの部分を自ら行う場合

また、実際には、これら2つのパターンが重なり合うこともある。例えば、次のような

ケースも見られる(必要に応じて、士業等専門家を活用するケースもある。)。

A マッチング以前の段階において、仲介者・FA を利用せずに自ら譲り受け側を

探し((2)-2)、それでも譲り受け側が見つからない場合には仲介者・FA を選定する((2)-1)、というケース

A マッチング以前の段階において、仲介者・FA を選定せずに M&A プラットフォー

ムを活用して譲り受け側を自ら見つける((2)-2)ものの、B マッチング後の段階

においては仲介者・FA を活用して契約交渉等を行う((2)-1)、というケース

(当事者同士の間でほぼ基本合意が締結できている段階で、クロージングまでの

手続のみを仲介者・FA に依頼するというケースは増えつつある。)

(2)-1 仲介者・FA を選定する場合

仲介者・FA の選定及び仲介契約・FA 契約の締結

まずは仲介者・FA を選定し、仲介契約・FA 契約を締結する(名称は「仲介契約」

「FA 契約」のほか、「業務委託契約」「アドバイザリー契約」等とされることもある。)。

ア 仲介者・FA の選定等

仲介者・FA の選定に当たっては、業務形態や業務範囲・内容、契約期間、報酬(手

数料)体系、M&A 取引の実績(M&A に取り組んだ件数・年数等)、利用者の声等をホ

ームページや担当者から確認した上で、複数の仲介者・FA の中から比較検討して決

定することが重要である。加えて、いわゆる「相性」も重要なことがある。

業務形態としては、仲介業務と FA 業務があり、いずれかの業務のみしか取り扱わ

ない支援機関もあるが、どちらの業務を依頼するかについて相談できる支援機関も

ある。どちらの形態が自身にとって適しているか検討すべきである。

業務範囲・内容については、本ガイドラインにおいては、仲介者には利益相反のリ

スクがあることから、一部の業務を提供しないことを含め、一定の措置を講ずることと

している(第2章Ⅱ5「仲介者における利益相反のリスクと現実的な対応策」参照)。ま

た、仲介者・FA によっては、業務範囲を本章Ⅱ1「中小 M&A フロー図」中(2)~(10)

の手続中の特定の工程のみに絞っている場合もあるが、全工程を行う場合でも、特

定の業種・地域に特化した仲介者・FA も存在すること等から、どのような支援が自身

にとって必要かよく検討して判断する必要がある。

なお、「M&A 支援機関登録制度」のホームページ(https://ma-shienkikan.go.jp/)で

は、同制度に登録された仲介業務又は FA 業務を行う支援機関のデータベースを提

供しており、登録支援機関の種類(専門業者、金融機関等の別)、M&A 支援業務の

開始時期や専従者数、手数料の算定基準(成功報酬において採用される報酬率、報

酬基準額(譲渡額/純資産/移動総資産等)、最低手数料の額、報酬の発生タイミング

(着手金/月額報酬/中間金/成功報酬))等を確認することができるため、仲介者・FA

を選定する際の情報収集手段として有用である。

また、仲介者・FA のほか、特に顧問税理士等、もともと関与のある士業等専門家の支援の下で手続を進めるケースもある(その場合には、顧問料以外に別途、報酬

を支払うケースもあるため、予め確認されたい。)。

イ 仲介契約・FA 契約の締結

仲介契約・FA 契約を締結する際は、中小 M&A に関する希望条件を明確に伝えつ

つ締結前に納得がいくまで十分な説明を受けることが必要であり、特に業務の具体

的な内容や報酬の妥当性等については、必要に応じて事業承継・引継ぎ支援センタ

ーを含め、他の支援機関に意見を求めること(セカンド・オピニオン)も有効である(な

お、仲介契約・FA 契約締結後においては、譲り渡し側・譲り受け側の情報の管理等

の観点から、元の支援機関がセカンド・オピニオンを許容しないことがあるため、仲介

契約・FA 契約締結後も、他の支援機関からセカンド・オピニオンを受けようとする場合

には、特に秘密保持に関する条項等の内容をよく確認し、セカンド・オピニオンを受け

られるような内容となるよう元の支援機関とよく相談されたい。)。

仲介契約・FA 契約の締結に当たっては、その主なポイントを列記したチェックリスト

も必要に応じて活用されたい(参考資料6「仲介契約・FA 契約締結時のチェックリスト」

参照)。

<仲介契約・FA 契約の内容の主なポイント>

業務形態

業務形態(仲介又は FA)により留意すべき事項が異なるため、いずれの業務形態

であるか確認しておく必要がある。両者の特徴は本章Ⅱ3(2)-1②「仲介者・FA の

比較」を参照されたい(参考資料7(1)「仲介契約書(M&A 仲介業務委託契約書)サン

プル」参照)。

業務範囲・内容

例えば、次のような形が考えられる。

・譲り渡し側・譲り受け側のマッチングまで

・バリュエーション(企業価値評価・事業価値評価)やデュー・ディリジェンス(DD)ま

・株式譲渡や事業譲渡といった具体的なスキーム(手法)の策定まで

・クロージング(決済)まで

・PMI(M&A 実行後における事業の統合に伴う作業)まで

ただし、これらはあくまで例示に過ぎず、業務範囲・内容は、各仲介者・FA によって

異なる。手数料と比較して十分な内容であるとして納得できるかどうか、必要であれ

ば事業承継・引継ぎ支援センター等へのセカンド・オピニオンも活用しながら、十分に討することが望ましい。

手数料の体系等

例えば、次のような体系が考えられる。

・着手金(主に仲介契約・FA 契約締結時に支払う)

・月額報酬(主に一定額を毎月支払う)

・中間金(例えば基本合意締結時等、案件完了前の一定の時点に支払う)

・成功報酬(主にクロージング時等の案件完了時に支払う)

ただし、これらはあくまで例示に過ぎず、手数料の金額や体系は、各仲介者・FA に

よって異なる。例えば、これらを全て請求する仲介者・FA もいる一方、着手金・月額報

酬・中間金を請求せずに成功報酬のみ請求する(いわゆる完全成功報酬型の)仲介

者・FA もいる。

また、成功報酬を算定する際には、一定の価額(例えば、譲渡額、移動総資産額、

純資産額といったものが考えられ、各仲介者・FAによって異なる。)に、一定の方式に

則った計算を施すものが多い。その場合でも、最低手数料が定められているケースも

多い(その水準は、各仲介者・FA において異なるため、比較検討することが望まし

い。)。この点については、本章Ⅴ「仲介者・FA の手数料についての考え方の整理」に

おいて説明する。また、仲介者・FAによっては、手数料以外の実費(例えば、交通費

等)の支払を求めることがあるため、留意する必要がある。

なお、仲介者の場合は、譲り渡し側・譲り受け側の双方と契約を締結の上、譲り渡

し側・譲り受け側の双方に対し手数料を請求することが通常である(仲介者は、契約

締結前に、譲り渡し側・譲り受け側双方から手数料を受領する旨を説明し(第2章Ⅱ5

「仲介者における利益相反のリスクと現実的な対応策」参照)、相手方も含めて譲り渡

し側・譲り受け側双方から受領する手数料に関する事項(報酬率、報酬基準額(譲渡

額/純資産/移動総資産等)、最低手数料の額、報酬の発生タイミング(着手金/月額

報酬/中間金/成功報酬)等について説明することとされている(第2章Ⅱ4(2)①「手

数料・提供する業務内容の説明」及び②「相手方の手数料の開示」参照)。

秘密保持

前述のとおり、情報の漏えいがあった場合には M&A が頓挫してしまうことがあり、

秘密保持の観点は重要であるため、仲介者・FA との間の業務委託契約等において

も、仲介者・FA に対し秘密保持義務を課すとともに、顧客側にも同義務を課すような

秘密保持条項が定められていることが通常である。

専門的な知見を有する一定の者(例えば、公認会計士、税理士、弁護士等の士業

等専門家及び公的な相談窓口である事業承継・引継ぎ支援センター等)から支援を

受けたり、意見や助言を求めたり(広義のセカンド・オピニオン)することの妨げにならないよう、秘密保持条項において、これらの者への情報共有が許容されているかどう

か(秘密保持義務が一部解除されているか否か)も確認しておくことが望ましい。

専任条項

マッチング支援等において並行して他の仲介者・FA への依頼を行うことを禁止する

条項(いわゆる「専任条項」)が設けられることがある。他の仲介者・FA にセカンド・オ

ピニオンを求めることや他の仲介者・FA を利用してマッチングを試みること等、禁止さ

れる行為が具体的にどのような行為であるのかという点を予め確認しておくことが望

ましい(専任条項の対象範囲は、可能な限り限定されるべきである。また、基本的に

は、依頼者が意見を求めたい部分を明確にした上で、これを妨げるべき合理的な理

由がない場合には、セカンド・オピニオンを求めることは許容される(第2章Ⅱ7「専任

条項の留意点」参照)。)。また、契約期間(専任条項が設けられる場合には、最長で

も6か月~1年以内が目安である(第2章Ⅱ7「専任条項の留意点」参照)。)や中途解

約に関する事項等についても併せて確認しておくことが望ましい。

直接交渉の制限に関する条項

依頼者が、M&A の相手方となる候補先と、仲介者・FA を介さずに直接、交渉又は

接触することを禁じる旨の条項が設けられることがある。直接交渉が禁じられる相手

方候補先の範囲(基本的には、仲介者・FA が関与・接触し、紹介した候補先のみに

限定される(第2章Ⅱ8「直接交渉の制限に関する条項の留意点」参照)。)、交渉・接

触の目的(基本的には、依頼者と候補先の M&A に関する目的で行われるものに限

定される(第2章Ⅱ8「直接交渉の制限に関する条項の留意点」参照)。)、条項の有

効期間(基本的には、仲介契約・FA 契約が終了するまでに限定される(第2章Ⅱ8

「直接交渉の制限に関する条項の留意点」参照)。)等について、予め確認しておくこ

とが望ましい(なお、仲介契約・FA 契約とは別に、依頼者が仲介者・FA との間で秘密

保持契約といった契約を締結する場合も多くあるが、当該契約にも直接交渉の制限

に関する条項が設けられていることがあるので留意されたい。)。

テール条項

マッチング支援等において、M&A が成立しないまま、仲介契約・FA 契約が終了し

た後、一定期間(いわゆる「テール期間」)内に、譲り渡し側が M&A を行った場合に、

その契約は終了しているにもかかわらず、その仲介者・FA が手数料を請求できること

とする条項(いわゆる「テール条項」)が定められる場合がある。テール期間の長さ

(最長でも2年~3年以内が目安である(第2章Ⅱ9「テール条項の留意点」参照)。)

や、テール条項の対象となる M&A(基本的には、その仲介者・FA が関与・接触し、譲

り渡し側に対して紹介した譲り受け側との M&A のみに限定される(第2章Ⅱ9「テール条項の留意点」参照)。)について、予め確認しておくことが望ましい。

責任(免責)に関する条項

仲介契約・FA 契約の履行に関し、一方当事者が他方に対し損害を負わせた場合

における法令上の損害賠償責任について、その要件や賠償すべき損害の範囲等を

修正する条項が定められる場合がある。仲介者・FA の一定の関与により依頼者に損

害が発生した場合に、仲介者・FA に適切に負担を求めることができるような内容とな

っているか、予め確認しておくことが望ましい。



セカンド・オピニオン/他の支援機関への相談の利点・留意点

仲介者・FA の選定・契約の締結や、契約締結後に仲介者・FA から受けた助言の

内容の妥当性の検証等に当たり、他の支援機関から意見や助言を求めること(セカ

ンド・オピニオン/他の支援機関への相談)は、依頼者の意思決定を後押しし、安心し

て M&A を進める上で有効である。

もっとも、同業他社から意見や助言を求める場合(狭義のセカンド・オピニオン)、相

談先の仲介者・FAが、セカンド・オピニオンを営業の機会と捉える等して、意見や助

言が中立性・客観性を欠く内容となる可能性があると指摘されており、留意が必要で

ある。この点、譲渡対価の決定や M&A の最終契約の内容等の重要な事項に関して、

中立的・客観的な意見や助言を求める場合には、M&A に詳しい士業等専門家や全

国に設置されている事業承継・引継ぎ支援センターへ相談すること(広義のセカンド・

オピニオン)が望ましい。

(2)-2 仲介者・FA を選定せず、工程の多くの部分を自ら行う場合

取引先や地域内の同業他社等を譲り受け側として自ら見つけるケースは、近年、

増加の傾向にあるとされる。

また、インターネット上のシステムを活用し、オンラインで、譲り渡し側と譲り受け側

のマッチングの場を提供するウェブサイトである M&A プラットフォームに登録すること

が、中小 M&A 実現の可能性を高めるという点で有効なケースもある(M&A プラットフ

ォームについては、本章Ⅲ「M&A プラットフォーム」参照)。各 M&A プラットフォームに

おいて、登録案件数、登録が必要な情報の種類、登録された情報が開示される範囲

や、マッチング後の支援の有無・内容等には差異があるので、数社を比較検討するこ

とが望ましい。

これらのケースでも、前述のとおり、秘密保持に注意する等、慎重な対応を要する

ポイントが多いことから当事者同士で手続を進めることに不安を感じた場合には、士

業等専門家等や事業承継・引継ぎ支援センター等の公的機関に相談することが望ま

しい。

なお、秘密保持契約を譲り渡し側・譲り受け側の当事者間で締結する場合は、参

考資料7(2)「秘密保持契約書サンプル」を参照されたい。

※以下の記載は、(2)-1を前提とするが、(2)-2の場合であっても、仲介者・FA や

士業等専門家を一部の工程について利用する場合には、その工程において、以下

に準じた対応を行うことが考えられる。


3) バリュエーション(企業価値評価・事業価値評価)

仲介者・FAや士業等専門家が、譲り渡し側経営者との面談や提出資料、現地調査

等に基づいて譲り渡し側の企業・事業の評価を行う。

中小 M&A では、「簿価純資産法」、「時価純資産法」、「類似会社比較法(マルチプ

ル法)」といったバリュエーションの手法により算定した株式価値・事業価値を基に譲

渡額を交渉するケースが多いが、事例ごとに適切な方法は異なるため、相談先の支

援機関に相談の上、各事例において選択することが望ましい。

また、算出された金額が必ずそのまま中小 M&A の譲渡額となるわけではなく、交

渉等の結果、「簿価純資産法」又は「時価純資産法」で算出された金額に数年分の任

意の利益(税引後利益又は経常利益等)を加算する場合等もあり、当事者同士が最

終的に合意した金額が譲渡額となるという点は理解されたい。

これら中小 M&A の譲渡額の算定方法の詳細については、参考資料2「中小 M&A

の譲渡額の算定方法」を参照されたい。

(4) 譲り受け側の選定(マッチング)

中小 M&A を進める上で、マッチングは重要な工程である。

マッチング支援の流れ

マッチングを具体的に進めるに当たり、仲介者・FA は、通常、まず譲り渡し側を特

定できない内容のノンネーム・シート(ティ―ザー)を、数十社程度にまで絞り込んだリ

スト(ロングリスト)内の企業に送付し打診する。その上で、関心を示した候補先から

譲り受け側となり得る数社程度をリスト(ショートリスト)化し、これらとの間で秘密保持

契約を締結した上で、その後の手続を進めることが通常である。仲介者・FA は、譲り

渡し側についての企業概要書を譲り受け側の候補先に交付し、その後のマッチング

支援等を行う。

譲り渡し側は、マッチングを希望する候補先、あるいは打診を避けたい先があれば、

事前に仲介者・FA に伝えることが望ましい。また、打診を行う優先順位について、仲

介者・FA との間で十分な話し合いを行われたい。

マッチング支援を単独の支援機関に依頼する場合と複数の支援機関に依頼する

場合の比較

マッチング支援を単独の支援機関に依頼するか、複数の支援機関に依頼するかと

いう点については、それぞれの利点・留意点を確認した上で、選択する。仲介契約・

FA 契約において、いわゆる専任条項や秘密保持に関する条項を設けた場合には、

他の支援機関に重ねてマッチング支援を依頼することが困難となることが通常である

ため留意されたい。



譲り受け側候補先の紹介が受けられない場合の対応

仮に、リスト内の候補先とのマッチングが連続して不調に終わったとしても、その後

に譲り渡し側の事業を評価する候補先が現れて、中小 M&A が成立する可能性は十

分にある。それでもなお、譲り渡し側が譲り受け側を見つけることができない場合に

は、M&A プラットフォームの活用を含め、別の支援機関への依頼も検討されたい。

別の支援機関に依頼する場合、元の支援機関である仲介者・FA に対し、別の支援

機関へ依頼したい旨を相談し、その了承を得る(元の仲介契約や FA 契約に専任条

項が設置されている場合には、支援機関がこれに応じないことも考えられる。)ことが

考えられる。その了承が得られなかった場合には、契約期間の満了を待って、又は契

約を解約して、元の仲介者・FA との契約を終了させた上で、別の支援機関に依頼す

る等の対応が考えられる。テール条項(本章Ⅱ3(2)-1①イ「仲介契約・FA 契約の締

結」中「<仲介契約・FA契約締結の内容の主なポイント>」参照)がある場合には、契

約終了後もその適用について留意が必要である。

候補先がなかなか見つからない場合には、適宜、支援機関にその理由を確認する

等して分析した上で、M&A に向けた活動を継続するか検討する。また、従業員承継

等の他の手法による事業承継も難しく、やむなく廃業せざるを得ない場合には、事業

において利用していた事業用資産等の経営資源の引継ぎの検討を開始することが望

まれる。譲り受け側の探索をいつ打ち切るかは、譲り渡し側と仲介者・FA とで協議の

上で決定されたい。

(5) 交渉

交渉の進め方は、譲り渡し側・譲り受け側の関係や事業の類似性、譲り渡し側・譲

り受け側と仲介者・FA との関係度合等により、譲り渡し側・譲り受け側の経営者同士

の面談(トップ面談)の時期や方法も含め、様々な形態がある。

特に、トップ面談は、譲り受け側の経営理念・企業文化や経営者の人間性等を直

接確認するための場であり、その後の円滑な交渉のためにも重要な機会である。一

方、自分の態度や表情も相手方に直接伝わりやすく、不用意な言動も信頼を損なう

おそれがあるため誠意ある態度で真摯に面談に臨む必要がある。

また、トップ面談を含む交渉の際には、中小M&Aにおける希望条件を明確化し、可

能な限りで優先順位を付し、特に、絶対に譲歩できないのがどの点なのか固めておく

ことが望ましい。

いずれにせよ、仲介者・FA と緊密なコミュニケーションを取り、仲介者・FA のアドバ

イスを得て交渉を進めることが重要である。

なお、譲り渡し側経営者は、特に中小 M&A 実行後の従業員の処遇を懸念することが多く、それが中小 M&A の促進にとって阻害要因になっているおそれもある。実際、

中小 M&A 実行後に従業員の一斉解雇(リストラ)が行われるケースは多くないと言わ

れるが、譲り渡し側経営者は、譲り受け側経営者が譲り渡し側幹部役員等に対して

高圧的な態度を取ることなく、譲り受け側役員・従業員と同等に接する姿勢を心掛け

ているか、確認しておくことが考えられる。

(6) 基本合意の締結

当事者間の交渉により概ね条件合意に達した場合には、譲り渡し側と譲り受け側

との間で最終契約におけるスキーム(株式譲渡や事業譲渡といった手法)、デュー・

ディリジェンス(DD)前の時点における譲渡対価の予定額や経営者その他の役員・従

業員の処遇、最終契約締結までのスケジュールと双方の実施事項や遵守事項、条件

の最終調整方法等、主要な合意事項を盛り込んだ基本合意を締結する(参考資料7

(3)「基本合意書サンプル」参照)。

基本合意の締結に当たっては、仲介者・FA や士業等専門家の助言を受けて調印

することが大切である。

ただし、資金繰り等の関係で、クロージング(決済)を急ぐ必要がある場合には、基

本合意を締結せず、最低限の秘密保持契約の締結のみに留めて、最終契約締結に

直接進むケースもあるため、状況に応じて、仲介者・FA や士業等専門家に相談され

たい。

(7) デュー・ディリジェンス(DD)

デュー・ディリジェンス(DD)は、主に譲り受け側が、譲り渡し側の財務・法務・ビジ

ネス(事業)・税務等の実態について、FA や士業等専門家を活用して調査する工程で

あり、譲渡対価の金額の精査や、判明した実態を踏まえて更に事業の改善を行うこと

等の目的で行われる。譲り受け側がデュー・ディリジェンス(DD)を行う場合、どの調

査を実施するかについては、譲り受け側の意向に従うこととなる。

通常、譲り受け側が FA や士業等専門家に調査の実施を依頼する。譲り渡し側が、

中小 M&A に関して社内(役員・従業員等)への情報開示を行っていない場合は、その

非開示の役員・従業員等に悟られずに実施する等の工夫が必要であるため、譲り渡

し側・譲り受け側ともに、FA や士業等専門家の指示を守ることが重要である。

なお、デュー・ディリジェンス(DD)は、想定し得るリスク全般について調査すること

もあれば、対象事項等を限定して簡易な形で行うこともあり、調査の密度は様々であ

る。中小 M&A の実務においては、譲り受け側が専門家費用を投じて本格的なデュ

ー・ディリジェンス(DD)を行うことなく、譲り渡し側の数年分の税務申告書の確認及び

譲り渡し側経営者へのヒアリング等の調査だけで終えることもある。

もっとも、譲り受け側はデュー・ディリジェンス(DD)により、客観的資料に基づいた検討を行うことができ、そもそも M&A を実行すべきか検討し、M&A を実行する場合に

は最終契約に定める内容・条件(譲渡額、表明保証、補償等)の調整を行うことで M

&A 成立後のトラブルを防止できる。また、M&A 成立後の成長を実現する上で重要と

なる PMI に資する有益な情報を取得することもできる。さらに、譲り渡し側はデュー・

デリジェンス(DD)の調査が十分になされない場合には、最終契約において譲り渡し

側が負う各種義務(表明保証の範囲や補償額・補償期間等)の負担の増加に繋がり

うる点に留意が必要である。このため、デュー・ディリジェンス(DD)は、譲り渡し側・譲

り受け側双方にとって重要なプロセスであり、予算等の制約がある場合であっても、

検討対象を絞るなどの工夫をして、実施する調査の内容を検討することが望ましい。

(8) 最終契約の交渉・締結

デュー・ディリジェンス(DD)で発見された点や基本合意で留保していた事項につい

て再交渉を行い、最終的な契約を締結する工程である。

仲介者・FA や士業等専門家のアドバイスを受けながら、契約内容に必要な事項が

網羅されているかを最終的に確認した後、調印を行う。仲介者・FA や士業等専門家

によるアドバイスに納得できず、不安がある場合には、調印前に契約内容に関する

意見を他の支援機関に求めること(セカンド・オピニオン)も有効である。また、契約に

盛り込む内容や条件を早い段階から仲介者・FA に伝えておいた方が、円滑な契約締

結につながることが多い。

中小 M&A の実務においては、株式譲渡か事業譲渡の手法が選択されることが多

い。それぞれの手法の大まかな特徴は以下のとおりである(その他の手法も存在す

る。概要は参考資料1「中小 M&A の主な手法と特徴」参照)。なお、株式譲渡も事業

譲渡も、全部譲渡は必須ではなく、一部譲渡のケースもあるが、その点は譲り渡し

側・譲り受け側の協議・交渉によって決定されることになる。

株式譲渡(参考資料7(4)「株式譲渡契約書サンプル」参照)

譲り渡し側の株主(多くの場合は経営者)が、譲り受け側に対し、譲り渡し側の株式

を譲渡する手法である。手続は比較的シンプルだが、譲り渡し側の法人格に変動は

ないため、(未払残業代等、貸借対照表上の数字には表れない)簿外債務・(紛争に

関する損害賠償債務等、現時点では未発生だが将来的に発生し得る)偶発債務リス

クが比較的高くなりやすく、より詳細なデュー・ディリジェンス(DD)が実施される傾向

にある。

事業譲渡(参考資料7(5)「事業譲渡契約書サンプル」参照)

譲り渡し側が、譲り受け側に対し、自社の事業を譲渡する手法である。譲渡の対象

となる財産(承継対象財産)を選択でき、譲り渡し側の法人格から切り離すことができるため、簿外債務・偶発債務リスクを比較的遮断しやすいが、手続には(土地、建物

や機械設備等といった)承継対象財産の特定や、(不動産登記手続等の)対抗要件

具備、許認可の取得等の作業が必要になる。

なお、個人事業主の中小 M&A は、事業譲渡(営業譲渡)の手法を用いることが通

常である。

また、最終契約で取り決める主要な内容は以下のとおりである(株式譲渡・事業譲

渡の両方に共通である。)。

譲渡対象(何を譲渡するか)

譲渡時期(いつ譲渡対象を譲渡するか)

譲渡対価(代金をいくらにするか)

支払時期・方法(譲渡対価をいつどのような方法で支払うか)

経営者・役職員の処遇(経営者による引継ぎ期間や、従業員の雇用継続の努力

義務等を設けてあるか)

経営者保証の扱い(譲り受け側による譲り渡し側の経営者保証の解除又は引継

ぎに係る義務、解除又は引継ぎがなされなかった場合に、譲り渡し側の経営者

保証に基づく請求が発生した際等の契約解除や補償等)