小説ホワイトハッカー純情4(皇紀弐千六百八十四年 令和六年(2024年)四月十七日)2

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 汎子も敗戦の日には毎年、子供達に引き揚げの苦しさ伝えた。不思議とそれが楽しそうなのだ。佳男も汎子も血液型はO型である。よって自然と子供3人はO型になる。つまり親子全員がO型なのだ。O型とは、陽気で朗らかな性格である。時として人生や仕事にぬけができるのがO型の欠点ではあるが、そんなことは気にしない。過ぎ去ったことを全て楽しい思い出にしてしまう。

 引き揚げの話は壮絶であった。日本に帰れると聞いて、お金まで渡して手続きをしたが、途中で朝鮮人に騙されたことがわかった。その時、祖父 二が朝鮮人に拳銃を突きつけたのだ。子供達が泣いていると、祖父は「泣くな!」と叫んだ。支那人や朝鮮人と相対するときは、絶対、弱みを見せてはいけない。両民族とも他国から征服され支配を受けてきた歴史なので、強いものにはとことんへつらうが、弱いものはとことん蹂躙する性質を持っている。

 それに加えて敗戦国で、軍事力がなくなると国民はこういう目を見る。

 汎子は、その時の父の姿をみて「お父さんはなんと強いんだろう」と思った。

 他の引き揚げの記憶は後に譲るとして、この時の経験から汎子は「負けてはならない」と強く思うようになった。

 伯父や叔母たちは、健に「お母さんはあんたに厳しかったね〜」というが、健は優しい汎子の姿しか覚えていない。確かに、二人以外の誰かがいるときは、日本の男としての姿を求められたが。汎子が、男子としての健を育てる上で必ず言っていた言葉がある。「負けてはダメです」。勝ちなさいとは一言も言われたことがなかった。

 その教えが、幼少の頃から身体が弱かった健ではあるが、意志と根性といじっぱりを健に植え付ける原動力となった。そして時として無謀な目標に向かうのであった。

 健が今回ホワイトハッカーに挑戦するのも汎子の教えによるものであった。

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このページは、宝徳 健が2024年4月17日 08:18に書いたブログ記事です。

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