本をからげてひっかつぎ、ずだ袋をさげて、トボトボと足を引きずって歩いています。体はやせ衰え、顔色は黒ずみ、いかにも無念そうです。
家に着きました。妻は機織の手を休めない。兄嫁は飯のしたくもしてくれない。父母は口をきこうともしません。蘇秦は、ため息をつきました。
「妻は夫とも思わず、兄嫁は弟とも思わない。父母もまたそしらぬ顔。それもこれも、みんな秦のせいだ」
妻にも、兄嫁にも、父母にもうとんじられた蘇秦は、それからというもの、夜は数十巻の書物を読み上げて読書にいそしみました。ことに太公望(周の文王・武王の参謀)の兵法を知ってからは、わき目もふらずにそらんじ、それを要約して、繰り返し遊説術を研究しました。読書して眠くなれば、錐を股に刺し、 流れる血をふきもしない。
「今度こそ王を説き伏せてやる。金銀綾錦を頂戴し、大臣にならずにいるものか」
こうして一年、ついに研究は成り、「揣摩(しま)の術」を会得しました。
「これなら、現代の王にぴったりだ」
さて、蘇秦は、説客となって、諸国をめぐります20090524
蘇秦という人は、戦国策というより戦国時代でとても重要な役割 を果たします。
戦国時代は、小国が大国に吸収されながら、最後は、韓・魏・趙・燕・斉・楚・秦の七国にまとまっていきます。この中で最大強国が秦です。他の六国は、秦 に滅ぼされないかといつもびくびくします。その中で、この他の六国をまとめあげて、秦に対抗した立役者が「蘇秦」なのです。これを、合従(がっしょう)連合といいます。
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